舞踏少年裏話そのいち〜滝川

 わざわざこんなところまで見に来てくださってありがとうございます。えー、今回の更新で当サイト開設時から続けていた連載、『舞踏少年は涙を流す』がめでたく完結いたしました。ぱちぱちぱち。
 で、ようやっと終わったので終わるまではあえて書かなかった、舞踏少年の裏設定――と言うほどのもんでもないんですが、自分はこーいうことを考えて舞踏少年を書いてたんだよーということをしゃべくっておこうかな、と。
 ていうかですね……語りたいんです! 自分が! そういうことを!
 だってさー、ネタばらしできるほどのネタなくてもさー、やっぱ聞いてほしいじゃん。舞踏少年はやっぱり開設当初から続けてるわけでそれなりに思い入れとかあるしさ。自分がそーいう作品の設定とか読むの好きなせいもあるけど。作者がなに考えて書いてるかって知りたくありません?
 というわけで、ここから先は自分がなに考えて舞踏少年を書いていたかということを知りたくない人は読まないほうが賢明です。自分の内心を知って、自分の予想とぴったしとかほくそえんだり馬っ鹿でーとか笑ったりへーそんなこと考えてたんだーとか思ったり、とにかく楽しめる自信のある方以外は読むのをやめることをお勧めします。できるだけぶっちゃけた話を書こうと思ってるしね。
 ここから先、と言っても自分はこの手の話を数回に分けて続けていくつもりです。しばらくトークの更新はこればっかになるでしょうが、ご容赦を。
 まず第一回目は問答無用の主人公、滝川陽平くんの話でーす。

 滝川はわりと書きやすいです。というか、開き直っていると言ったほうが正しいかもしれない。
 どんなにアルファシステムのイメージと違っていても、他の人のイメージと違っていても、これが自分の滝川なんだ、なんと言われようと変えるつもりはない! とそのくらいのことは考えていますので。
 だってゲームをやった時から滝川を愛し続けて、もう自分の中に『滝川』というキャラができあがっちゃってるんですもの。いまさらそれ違うよって言われてもわしの滝川なんだからわしの思うとおりにしてなにが悪いってなもんです。
 で、滝川を主人公にして滝川絢爛舞踏小説を書こうと思った時、抱いたイメージなんですが……。
 なにせきっかけが滝川主人公にして小説書きたい! っていう単純な思いだったもんで(なぜ滝川を絢爛舞踏小説の主人公にしたのか? 参照)、正直なところを申し上げますと深く考えていませんでした(おい)。なんとなーくこんな感じかな? で書き始めちゃったんです。
 一応滝川が絢爛舞踏になるわけだからOVERSの介入は不可欠だよなとか、あの滝川が自分が絢爛舞踏取ったら泣くんじゃないかな、他キャラがアルガナ取った時の数倍くらいは。くらいのことは考えていたんですけどね。
 題名もなんとなーくのイメージと音の響きで決めちゃったんです。しかしそれが後からこうも作品の展開に影響を及ぼそうとは。

 自分が舞踏少年を書き始めた当初思い描いていたストーリーは、ただの人間≠ナある滝川が血を吐きながらヒーローになっていくというものでした。
 終わってみると、自分としては、滝川はただの人間≠フままヒーローとして世界を救ったというように思っています。
 なんというか……自分の中では、滝川はどうしてもただの人間≠ゥら変われなかったっていうか、変わらなかったっていうかな感じなんですよね。つまり、舞踏少年の滝川は芝村じゃないんです。舞と結婚してもやっぱり芝村じゃないんです。
 最初の滝川からはむろんいろんな経験を経て成長してはいるけれど、それは芝村へ変わったってことじゃないんです。それっぽいところも少しはあるけど、完全に芝村チックになったわけじゃないんですよね。
 どこが違うかっていうと……いろいろあるんですけど、その最たるものが、『滝川は泣く=xっていうこと。
 芝村は泣くのをやめて戦うことを決めた人たち。滝川も戦うことを決めた人間ではあります。
 でも、滝川は戦いながら泣くんですよ。痛いよう痛いようって、悲しいよう悲しいようって、泣き言言うんですよね。
 戦うのを決めたのだって前向きな決め方じゃないんです。もっと嫌なことや怖いことから逃げたくて戦おうって決めたんですよ。周りにおいていかれるのが、周りが死んでしまって自分がなにもしないでいるのが怖いから。少なくとも、最初はね。
 滝川はすっげーパイロットになってアニメ化されるかもとか調子のいいこと言ってますけど、あれ実は全然本気じゃないんです。自分では本気と思い込んでるだけなんです。本当はそんなことかないっこないって、無理だってわかってるんですね。ていうか、そう決め込んじゃってるんです。
 手に入らないものだって決め込んじゃってるから安心して夢を見ることができる。滝川は本当は自分なんかすぐに死んじゃうんだろうなって諦めてるんです。心のどこかで。それもしょうがないなって思っちゃってるんです。なのにその自覚がないところが滝川の滝川たるところなんですけどね。
 自覚がないから死ぬ覚悟なんて全然できてない。プレッシャーと戦う覚悟もできてない。諦めてるのに諦めきれなくてじたばたするけどそれだけじゃ何も手に入らない。それが悔しくて悲しくて落ち込み、現実から目を背けようとして叶わないとわかっている夢の世界に浸る。悪循環ですね。
 舞踏少年の最初の方、滝川が急に効率的に訓練するようになったのはOVERSの影響によるものだと思っていいです。最初の戦闘で死なないですんだのもOVERSのおかげです。OVERSは最初から滝川に無意識下から影響を与えてましたから。
 OVERSとしては、最初は訓練をサボっていた無職のダメ学兵が絢爛舞踏になっていく、という美しいストーリーを描いていたわけです。
 まあ最初の訓練しようと決めたきっかけは滝川自身のものなんですけどね。それはとにかく。
 そんな弱い滝川は舞と出会って、舞に自分のことを認めてもらい、(OVERSの後押しを受けて)変わってきました。舞という好きな人ができて、その人を守りたいという思いから生きたい、生きなくちゃと思うようになりました。
(OVERSの後押しを受けて)戦闘技術はどんどん高くなり、アルガナまで獲ることができるようになりました。
 でも、それでも滝川はどこかまだ変わっていないんですよ。心の中には暗くて狭いところに閉じ込められて、助けて助けてって泣いてる子供がいるんですね。
 ……滝川の行動原理はOVERSの言った通り、誰かに認めてほしい、褒めてほしいというものです。
 もちろんそれだけじゃない。訓練しようと決めた時のように、舞を背中に乗せた時のように。みんなを守りたい、みんなに幸せになってほしいっていう想いもすごく強い。
 だけど、それはものすごく子供っぽい想いなんです。子供が捨てられた子猫が可哀想で可哀想で、後先考えずに拾ってきちゃうように、テレビで飢えている人たちを見ていてもたってもいられなくなるように。純粋で、純粋すぎて現実に対応できない想いなんです。
 アルガナから絢爛舞踏までの滝川は、目の前の人を救いたいのになにもできない(と感じている)戦闘技術だけが膨れ上がった無力な子供だと言っていいでしょう。
 
 あまりに長くなったんでいったんブレイクして、まとめますと。
 滝川は子供だということなんです。
 人を救いたいという気持ちはあるけどどうしたらいいかわからない。でも人の辛い気持ちは敏感に感じてしまい、それを抱え込んでしまう。
 自分のことだけでもいっぱいいっぱいなのにさらに他人の気持ちまで抱え込んで、辛くて辛くて耐え切れなくて泣き出してしまう。そーいう弱い子供なんです、滝川は。
 でも。そういう子供に、なんだか救われることってありますよね。
 泣いたってなんの解決にもならない。エネルギーの無駄遣い。そんなことしてる暇があるなら少しでも役に立つことをした方がいい。確かにそうです。
 だけど、わかっちゃいるけど泣きたくなることってあるじゃないですか。辛くて辛くて、泣いてようやく救われることってあると思うんですよね。
 無駄でも、なんの役にも立たなくても、弱い心の証明で恥ずべきものだったとしても。泣きたくなるくらい辛い時に、誰かが一緒に泣いてくれること、君が辛くて僕も辛いよ、そう言ってくれること。
 それってすごく、幸せなことだと思うんです。
 滝川はそういう存在なんです。芝村とは正反対の無駄の塊。なくても人は生きていけることをやたらといっぱい抱え込んだ少年。
 本当は殺したくないと幻獣たちのために泣く人間。人を守るために自分の全てをかけているのに自己の存在を否定する、泣きながら戦う絢爛舞踏。
 泣いたってなんの救いにもならないけど、ほんのちょっとの慰めにはなるかもしれない。
 そういう彼だから、いろんな人間が彼にこだわったんだと――考えるのは甘すぎですかね?

 なんだかわけわかんなくなってきた気がするので、とりあえず今回はこのへんで終わり。
 まとまりなくってすいません。あとイメージ壊しちゃったらごめんなさいです。

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