三蔵×悟能(4)

「そのウミとかいうのを出してやる。この俺が直々にな。喜べ」
 三蔵は、――――悟能に欲情していた。幼い色香にすっかり当てられてしまったのだ。
「さん……!」
 三蔵の手が、悟能の性器へと伸びた。
「ココをこう……」
「や……!」
 悟能は悲鳴をあげた。銃を扱い慣れて節立った男の指が、性器に絡みついた。信じられなかった。
「んんッ」
 身をよじって三蔵の手の感触に耐えた。
「俺の手でヤルのと、自分の手でヤルのとどっちが気持ちイイ。言え」
「あっあッ……!」
 甘い、鼻にかかった声が幾らでも出てしまう。
「……ガキだガキだと思ってたのに、いつの間にか、こんなトコいじるのを覚えたのか」
「違……ッ」
「何が違う。ココを自分で慰めてたら、白いのが出たんだろうが。隠すんじゃねぇ」
 ぺろりと三蔵は舌で上唇を舐めた。悟能がいままでみたこともないほど、それは性的な表情だった。こんな三蔵は見たことがなかった。こんな三蔵は知らなかった。
「いやらしいガキだ。いつの間にか自慰なんか覚えやがって」
「触ってませんッ……僕、触ってなんか……!」
 初々しい様子で、悟能は首を横に振った。
「僕、寝ていただけなんです。本当なんです。寝てたら勝手にココが……」
 いつの間にか、悟能は夢精したことを告白させられていた。おまけにそれは、三蔵に、まだ自分で自慰をしたこともないと白状したも同然だった。
 悟能は初々しかった。例えるなら純白の紙だ。
「……チッ」
 三蔵は舌打ちした。こんなことになってしまうとは、自分でも予測していなかった。子供だ子供だと思っていた悟能は、いつの間にか大人へなろうとしていた。
 しかも、その様子はあまりにも初々しくも可憐だった。そんな色香の直撃を、うっかり三蔵は受けてしまった。
 もう、自分の欲望を、そう、悟能への欲望を誤魔化したり、見ないふりをする余裕など消し飛んだ。
 本当は欲しかった。 ずっとこの可愛らしい少年が欲しくてしょうがなかった。躰と躰を繋いでしまいたくってたまらなかったのだ。
 「最高僧」だからとか、「三蔵」だからとか、まだ悟能が子供だからだとかで、そんな欲望を無意識に押さえこんできたのだ。
「イヤ……イヤでッ」
 悟能は喘ぎながらも腰を浮かせた。幼いながらも、甘い媚態だった。
「何がイヤだ。気持ちよくてたまらねぇんだろうが」
 三蔵は悟能のペニスを指で激しく扱き出した。
「ああッ……あぅッ」
 びくん、びくんと悟能のしなやかな脚が痙攣する。
「イイか? ちゃんと返事しろ」
「あッ」
「……フン。ガキの癖にちゃんと剥けてんじゃねぇか」
 三蔵の指が、扱いているペニスの裏筋と、亀頭の境目の辺りを弾いた。
「でも、まぁ、まだガキだな。……なるほどな『一節切』か」
 三蔵は悟能の知らない言葉を呟くと口を歪めた。育ちきってない少年の性器は、ピンク色をしていて初々しいことこの上なかった。
「う……」
 三蔵が裏筋を擦り上げる度に、電撃に似た快楽が背筋を走り抜ける。強烈すぎる快感に悟能は叫んだ。
「あああッ」
「……ココか」
 はぁはぁと熱い吐息が悟能の唇から漏れる。幼い裸体は突然の暴力的な性行為に震えているが、与えられる悦楽に抵抗することができない。
「くぅッ! 」
 三蔵の唇が、直接、悟能のペニスの先端に這った。
「ああッ……あ! 」
「よくある 『尺八』 ってのは竹の節を一節半、使う。似てるけど、尺八より小さい楽器に『一節切』ってのがある」
 三蔵は震える裏筋へも舌を這わせた。
「あッあッさん……ぞ」
 悟能の指が、自分の股間で上下する、三蔵の金の髪を引っ張る。
「『一節切』ってのは、名前どおり竹の一節だけを使ってできるヤツのことだ。尺八より短い。――――だから」
 くっくっくっと、三蔵の口元にひとの悪い笑いが浮かんだ。
「てめぇみたいな、ガキを口で慰めるのを……『尺八』じゃなくって『一節切』って言うんだとよ」
「ひ……! 」
 敏感すぎる箇所を三蔵の指と舌が気まぐれに這った。
「……なるほどな。確かに短かい。……まだ、ガキだから育ちきってねぇな」
 先走りの液を吐き出し続け、みだらに濡れ光る悟能の幼いペニスを三蔵は指で弾いた。
「あ! 」
「ココんとこに皮もまだ多いしな。ま、中身が育てばそのうちピンと張るから安心しろ」
「ああぅッ……ああッああああッんッ」
 淫らな愛撫に、もう限界だった。悟能は腰をくねらせて跳ねた。
「さんぞ……さんぞ……さ……ま」
 我慢できなかった。間歇的に震えながら、白い体液を三蔵の手へ吐き出した。
「『三蔵』でいい」
 ぴくんぴくんと痙攣する肢体を敷き込みながら、三蔵が囁く。
「……やっぱり、ガキは早いな」
「ああ……」
 悟能はぶるっと躰を震わせた。あっという間に達してしまっていた。
「皮被ってると、もっと早いだろうな。ま、こんなモンか」
 くっくっくっと笑い混じりに言われる恥ずかしい言葉を、もうほとんど悟能は聞いてられなかった。羞恥で頭が煮えたようになっていた。
「出たぞ。コレだろ。白い『ウミ』ってのは」
 三蔵は、自分の指に絡まる白い液体を、悟能の鼻先につきつけた。
「舐めろ」
「……う」
 逆らうことはできなかった。悟能は震える舌を突き出した。三蔵の指を無理やり咥えさせられる。
粘つく自分の体液を舐めさせられた。塩気と、かなり癖のある味が舌を刺す。
「精液だ」
 三蔵が耳元で囁いた。
「賢そうなフリしてた癖に、知らなかったのか。ウミじゃなくってコレは『精液』だ。分かったか」
「う……」
 悟能は目元を朱で染めた。恥ずかしかった。
「俺がもっと出し方を教えてやる」
 三蔵が甘く、しかし嗜虐的な口調で続けて囁いた。
「今夜はたっぷり出させてやる。……もう、何も出てこないくらいな。絞りきってやるから安心しろ」
「あ……! 」
 ヌルッとした感触が尻に走った。手についた精液を三蔵が拭ったのだ。
「ホラ、自分で持ってろ」
「う……」
 三蔵は、力の抜けた悟能に、悟能自身の性器を握らせる。
「安心するだろうが」
 自分の大きな手ごと、少年の手をつかみ、性器を扱く。
「やッ……! 」
 再び惑乱する感覚に襲われて、悟能が躰を仰け反らせた。
「自分でヤルときはこうするんだ。覚えろ」
「ああッ」
「……触ってねぇのに、こんなとこまで勃たせてんのか」
 悟能は、すっかり感じきって、胸の屹立まで尖らせていた。三蔵の声は情欲で低く掠れた。
「素質だな。……感じやすい」
「ああッ」
 尖った幼い乳首に三蔵の舌が這う。ちゅっちゅっと吸った。
「やめぇ……やめて……」
「なんでだ。気持ちイイだろうが」
「ああ……」
 悟能は仰け反った。ときおり強すぎる快楽のため、頭の隅が白くなってそのまま意識も何もかも失ってしまいそうだった。
「淫乱」
 くっくっくっと三蔵が心地よさげに笑う。
「ち、違いま……」
 三蔵に『淫乱』などと言われて、悟能は首を振って否定した。
「何が違う。こんなに感じやすい躰してんじゃねぇか。生まれつきそういう素質なんだよ。こんなオマエみたいなヤツのことをな」
 確かに三蔵が舌を胸に這わせると、それに連動して悟能のペニスはびくびくと跳ねた。
「淫乱って言うんだ。覚えとけ」
「う……! 」
 悟能はひたすら、首を振った。幼いが、いや幼いがゆえに自分の淫らさを認められなかった。
「ホラ、また出るぞ」
「ああッ」
 乳首をなめすすりながら、性器をもてあそび扱き上げる三蔵の手の動きは止まらなかった。同時に攻め立てられて、悟能は限界だった。
「ああっああーッああ……」
 びくんびくんと四肢を震わせて、また弾けてしまった。白い体液がその腹の上に放出される。
「さんぞ……さんぞう……様」
 まだ大人の男に成り切らない肢体を紅潮させ朱色に染めて、悟能は三蔵の腕に縋った。怖かった。
「僕……躰……躰がおかしい……です」
 慣れぬ行為に、全身が震えている。三蔵の口で、手で慰められてしまった。現実とも思えなかった。
 夜の妖しい夢の中に、知らぬうちに自分は入り込んでしまったのではないかとすら思った。三蔵に助けて欲しかった。
 初心に躰ごと助けを求めて取り縋る悟能の躰を三蔵は圧し掛かって押さえつけた。
「おとなしくしてろ」
「さ……」
 今や、庇護者から捕食者、または陵辱者に変化した三蔵はその整った口元に妖しい笑みを浮かべた。
「もっと気持ちよくしてやる」
 声音は興奮のためやや掠れた。こんな三蔵の性的な声を悟能は初めて聞いた。
「あ……」
 三蔵は悟能を押さえつけたまま、自分の帯を片手で解いた。しゅるしゅると布の擦れる音が立つ。
「やぁッ……もッ」
 男の手で剥き出しにされている恥ずかしい下肢に三蔵のが押し付けられる。
「ああ……ダメで……こんな……」
 理性を飛ばし切れないらしい。不慣れな悟能はどこまでも初々しい。
 三蔵が強要する恥ずかしい行為に、羞恥のあまり目元を赤く染め目を潤ませ、抵抗しようと腕で圧し掛かってくる三蔵の躰を退けようと必死だった。
「んんッ……! 」
 不慣れな悟能を笑うかのように、三蔵の性器が押し当てられる。それは既に今まで悟能が見せた、媚態に煽られ硬く張り詰めきっていた。
「ああッ」
 三蔵は悟能の性器と自分の性器を同時に手でつかみ、扱き出した。
「やめ……やめて」
 悟能は羞恥のあまり、上体を起こし、三蔵の行為を止めようと手を伸ばした。恥ずかしくて眩暈がした。
 三蔵の性器と、自分の性器がぴったりとくっつき亀頭と亀頭が擦れ合わされる。
「うるせぇ。俺も見てるだけじゃ我慢できねぇ。抜かせろ」
 三蔵は唸るように言った。
「てめぇのせいでこんなにガチガチだ。責任とれ」
「や……」
 淫らな行為を止めようと伸ばされた悟能の手を、三蔵はつかんで自分と相手の性器へ添えさせた。
「ひぃッ」
「扱け。ヤリ方は教えただろうが」
「無理で……」
「こうだ」
「ああッあぅッ」
 悟能の手をつかんだまま、強く扱いた。悟能など、この強烈な快感にひとたまりもなかった。お互いを慰めるべく愛撫を繰り返す。びくびくと重ねて添えられた性器が震えてひくつく。
「イイか」
 三蔵は舌で自分の唇を舐めた。
「……俺もだ」
 甘い声だった。
「くぅっ」
 三蔵の躰の下に押さえ込まれたまま、悟能は仰け反った。甘美すぎる体験だった。意識が混濁して、白い闇が侵食してくる。
「一緒にな」
 ぐちゅ、ぐちゅと卑猥な音を立てながら、三蔵と悟能の手の中で、ふたりの性器は硬く張り詰めて震えている。
 悟能のは、三蔵のより色が薄く可憐で幼い。今にも儚く弾けてしまいそうだった。
「さんぞ……ッ……さんぞッさ……ま」
 悟能は悲鳴じみた声で、おのれの主人の名を呼んだ。もう、彼に許されるのはそんなことぐらいしか残っていなかった。
「出……出るッ……また……またッ」
 腰奥で情欲が燻って疼き、その性器の幹を強烈な快楽の奔流が迸ってくる。
「分かった」
 三蔵は扱く手の早さを一層早めた。
「イッちまえ」
「あああッあああッああ―――」
 びくんびくんと躰を震わせて、悟能は果てた。当然のごとく精液は一緒に扱いていた三蔵の性器にべったりと絡みつく。
「クソ……」
「ひぃッ」
 達したばかりで、敏感なのにも構わず、三蔵は慰める手の動きを止めなかった。悟能の精液で余計滑る勢いで扱いている。
「ああッああッ」
 狂ってしまう。半ば真剣に悟能は思った。舌を突き出して呼吸を荒げた。息が上手くできなかった。
「……ッ」
 ぶるっと三蔵の背が震えた。手の動きが一瞬止まる。
「は……」
 高僧の口から、初めて遂情の呻きがこぼれた。成人男性である三蔵の吐き出した体液は悟能のよりも濃く量が多かった。
 ふたりの亀頭を濡らし、幹へしたたり、悟能の生えかけている茂みへと伝って落ちてゆく。
「さん……ぞ」
 悟能の腰ががくがくと震えた。現実感がなかった。いつもお高く取り澄ましているご主人様の、悟能の知らない性的な一面だった。
 達するときまで三蔵は美しかった。性的なものが表情に滲んではいたが、それも見ていると躰のどこかを疼かせる美しさだ。
 淫乱、と呼ばれたのを思い出した。こんな淫らなことばかり考えているようでは、本当に淫乱なのかもしれなかった。
 ぼんやりとそんな思いにとらわれていると、下肢に妙な感触が走るのに気がついた。
 三蔵が、欲望を吐き出したものの、まだ硬く衰えていないそれで、悟能の後の孔と性器をつなぐあたりを突ついたのだ。
「ぐ……」
 通常、蟻の戸渡りと呼ばれる、細い筋のついた場所で、それも男の性感帯ではあった。
が、経験不足の悟能には、そんなところを愛撫されても恐れおののくばかりだった。
「そうか。こっちは慣らさねぇとダメか」
 三蔵は呟いた。当然といえば当然だったが、悟能が目覚めたのは精液を吐き出す生理的な現象だけだった。
 悟能は男との閨の所作など、何も知らないのだ。この点に関しては、子供すぎるくらい子供だった。
「や……」
 三蔵のものが、後ろの孔へ押し当てられたとき、悟能は思わず抵抗した。怖かったのだ。
「後生です! さん……」
 悟能は叫んだ。声には本物の恐怖が滲んでいた。本能的なものだった。教えられてなくとも、三蔵がしようとしている行為は、自分にはまだ無理だと分かったのだ。未知の畏れが先立っていた。
「……こいつは」
 三蔵は唸った。硬質な悟能の躰は、すぐに抱くのは無理そうだった。悟能の孔はきゅっと慎ましやかにつぼみ、ほころびる気配もなかった。
 念入りに解し、慣らしてやる必要があった。それも日数をかけて調教してやらないと無理だろう。
 なにしろ、全く男を知らない躰だ。
 舌打ちをひとつすると、三蔵は挿入するのを諦めた。悟能はすっかり目尻を涙で濡らしている。不安でしょうがないのだろう。肩を震わせて泣いていた。
「う……うっ」
「泣くな。ガキが」
 叱りつけると三蔵は悟能を腕に抱いた。
「……もう一回くらい抜いとくと、よく寝れそうだがな」
 三蔵は悟能を抱き締めたまま、横になろうと毛布を引き寄せた。
「まあ、いい」
 すっかり怖がって涙を滲ませている下僕を、三蔵はちらりと横目で眺めた。
 悟能の黒髪が緊張のためか、汗ですっかり濡れている。しなやかな肢体は三蔵が施した性的な愛撫や口吸いで鬱血の跡を幾つも残している。
 まだ子供のあどけなさを残している躰には不釣合いな艶めかしさだった。決定的なことは、まだしていないとはいえ、汚れのない処女雪をひっかきまわした後に似た気分だった。やや罪悪感があった。
「寝るぞ」
 後ろ髪をひかれる思いを振り切って三蔵は言った。悟能を気遣ったのだ。
「さんぞ……」
 帯を再び結び、悟能は三蔵の隣で横になった。ぶっきらぼうな三蔵の口調には照れが滲んでいたが、まだ子供の悟能にはそんな心の機微までは分からない。
「……はい」
 淫らな欲望の犠牲になりそうだったというのに、悟能は相変わらず従順だった。三蔵に言われるがまま、傍にくっついて身を寄せると目を閉じた。
 夜はそのまま更けていった。



「三蔵×悟能(5)」に続く