三蔵×悟能(16)

「ああ……」
 三蔵が寝台の上に引き倒して、その白い着物をはぎとってゆく。なめらかな肌がゆらめくろうそくの明かりと月明かりの下で震えている。
「悟能」
 三蔵はそっと自分の稚児に口づけた。そのままその唇を舌でなぞる。
「あ……ッ」
 悟能は全身を震わせた。痙攣している。そしてそのまま、
「…………ッく」
 三蔵の腕の中で、腰をひくひくとゆらめかせた。最初は陶然としていたが、そのうち顔をしかめて苦しい表情を浮かべだした。
「…………」
 何か反応がおかしい。
「お……おゆる……し……を」
 あえぐように悟能が呟く。肌を震わせてわなないている。自分で自分の手を何かを耐えるかのように噛んでいる。
 三蔵が後ろへ強引に指を這わせる。悟能は我慢できずに悲鳴に近い声をあげた。
「ゆる……し……ああっああ」
 三蔵は目を見張った。
「だ……め」
 悟能の屹立は、かわいそうなことに絹糸で編まれたひもで結わかれていた。
「パンパンじゃねぇか。なんだこれは」
 大人の長い指が少年の初々しい性器へ伸びる。ひもを解こうと結び目に爪がかかった。
「ひッ」
 もう、それだけで感じるのだろう。悟能が眉根を寄せ、奥歯を噛みしめた。
「とったら……とったら……ダメぇ」
 悟能がうわごとのように繰り返す。
「ああッ」
 三蔵の指が、結び目を解いた瞬間。
「…………ッくぅッ」
 生々しい声を放って、美童は達してしまった。
「ああッああああッああああああッ」
 びくんびくんと腰を震わせる。荒い息を吐いて、三蔵の前で崩れ落ちた。
「俺を放ってひとりでイキ狂いやがって」
 お上人様はぼそりと呟いた。冷静な声だ。
「てめぇ。久しぶりあったのに一体、何なんだ」
 不満だった。ずっと行のために逢えずにいたのだ。話したいことがたくさんあった。
「ああッ」
 悟能の両脚を拡げさせる、その奥に息づいている秘めた場所を覗きこんだ。
「……こいつは」
 淫らな肉の環はいつもの慎ましさを忘れ去っていた。ひくひくとわななき、つぼんだり開いたりしてオスが来るのをひたすら待ちかねている。モノ欲しげでいやらしい。
「あああッ」
 もう、三蔵が息を吹きかけるだけで感じてしまうらしい。
 震えるその卑猥な孔に、最高僧は右手の中指をそっと差し入れた。
 すると、
「……ダメぇッダメあああッほんとうにダメ……」
 がくがくと悟能が脚を、腰を、尻を痙攣させた。
「あーッあああッああーッ」
 わなないて、また白濁した汁を漏らしてしまった。
「……てめぇ」
 三蔵は驚いたように目を見開いた。もう、悟能のはこれ以上ないくらい、とろけきっていた。
「ずぶずぶじゃねぇか。なんだこれは」
 悟能の乱れきったイキ顔を覗きこみながら、三蔵は嗜虐的な口調でささやく。
「ああッ」
「もう、指なんざ1本じゃ足りねェんだろうが。何本いく?」
「さん……」
 悟能は顔をしかめた。
 話が違った。悟能に説明した僧の話では、三蔵も悟能の下肢には触れないはずだった。だから、ひどい準備に耐えたのだ。それなのにこれでは。
「それとも、もう俺のが欲しいのか。そうなんだな」
 返事のかわりに、稚児は最高僧に抱きついた。
 破戒僧の三蔵が稚児灌頂の終わった今、初夜の技法まで守るわけがなかったのだ。本当に悟能は真面目すぎた。




 太くて硬い怒張が打ち込まれる。
「ああッあああッ……さん……」
 ひくひくと肉ひだが三蔵を締めつける。最初からひどく激しい締め付けだった。しゃぶりつくされそうだった。
「特別なしたくってのはコレのことか。ナニしたんだコレは」
 けなげな悟能の気持ちも知らず、三蔵が穿ちながら淫蕩な声音でささやく。
「う……」
 きらきらした涙が、少年の瞳からあふれ、頬を濡らしていく。
「言わないと、動かねぇぞ。言え。ヤりたくておかしくなりそうなんだろうが」
 ただでさえ、禁欲をさせられ続けた肉体はひとたまりもなかった。拷問のようだ。
「……は、張り型で」
 男性器を模した淫らなオモチャで慰めるように言われたことを白状しだした。
「……どんな風に、『したく』 してたのか言え」
 三蔵がゆっくりと腰を引き次の瞬間、打ち込んできた。
「あああッ」
「言え」
 もう、言葉を舌でつづるのも苦しい。というか快楽に真っ白に脳が焼かれて何も考えられなくなっている。なのに、冷静な三蔵は可愛い稚児をひたすら問い詰めていた。
「こんな、ずぼずぼずっぷり、ひとりでぐちゃぐちゃになりやがって。どんな風に 『したく』 したんだてめぇは」
 かすかに声音に嫉妬が滲んでいる。悟能は三蔵の腕の中で首を横へ振った。
「は、張り型に……丁子油を塗って」
 丁子の香りのするとろりとした油をいちばん小さい張り型に塗って、おそるおそる脚を開き、肉の環にぴたりとつけた。挿入する勇気はなかなかでなかった。
「どんな風にいれた。自分の手でいれたのか。それとも誰かに手伝ってもらったのか」
 後半の言葉を言った三蔵の眼の光が、剣呑な光りを帯びるのを見て悟能はあわてた。
「だ、誰にも手伝ってもらってま……せん。本当です」
「じゃ、自分の手で挿入したのか。オモチャを。それとも床に置いて、腰をおろしたのか」
 卑猥な情景を想像して、三蔵も興奮してきたのか、貫き方がひどくなってゆく。とろとろになっている悟能の後ろは、油でとろけきり、ぬちゃぬちゃと淫らすぎる音が交接する場所から立った。三蔵が抜いたり入れたりする場所が、わななき、とろけ、ひくついている。
「あああッ」
「言え、いやらしいヤツだ。許さねぇ」
 そのまま、立て続けに穿った。
「ひぃッ」
 悟能が奥歯を砕けるくらい必死で噛み締めた。それでもわななく唇で答えた。
「自分の手で……小さいのから、そっと、まわすようにして、挿れまし……た」
「それでどうだった。入れてみて気持ちよかったのか」
 悟能は眉根を寄せた。最初こそ、慣れない玩具を怖がっていたが、張り型で自分の肉筒をいっぱいにしてみると、どんなに自分が肉欲に乾き、飢えていたか分かってしまったのだ。挿入して、咆哮するくらい感じてしまっていた。
「さん……ぞ……さま」
「気持ちよかったんだな。淫乱が。それからどうしたんだ」
「達してはいけないって言われてまし……た。それで前を」
 一番、小さい張り型でも、眩暈がするくらい気持ちが良かった。びくびくと前も勃ちあがってしまう。悟能は言いつけどおり、前を絹ひもで縛ったのだ。
 それから先は地獄だった。
「縛って……でも、いわれたとおり、後ろに……さんぞ…さまが……そのままできるか」
 とにかく、とろとろにしておけと言われたので、悟能は次の中くらいの張り型に油を塗したのだ。
「次の中くらいのを……いれました」
 あえぎながら、三蔵に告げる。
「そんなにオモチャがあるのか。それでこんなに俺を待たせたんだな」
 三蔵はきつく悟能を抱きしめた。抱きしめながら穿つ。
「あああッ」
「それから、どうしたんだ。中くらいのをいれたらどうなった」
 腰を回して、抜き挿しされて、悟能がのけぞった。ひどい淫楽の炎に焼かれるような快楽だった。
「僕のが……ひくひくしてきちゃって。イッちゃって。でも前が」
 前は縛ってあったから精液は溜まる一方だった。パンパンになって苦しくて目を剥いた。
「もう、さんぞ……さまと」
 したくて、したくて、たまらなくって。でもできなくて、『したく』 が済んでないから。悟能の健康な若い肉の環は、緊張して、引き絞っていて、まだ弛緩はしていなかった。これでは言われたようにはいらないかもしれない。
「次の一番大きいのを挿入して」
 真面目な悟能は、言われたとおり、準備をしたのだ。無理やり、三蔵と同じくらいの大きさの張り型にやはり芳しい油を塗して挿入して。
「でも、大きすぎたから」
 悟能は涙ぐんだ。三蔵の身体の下で泣きながら震えている。
「自分で上手く入れられなくて」
「誰かに挿れてもらったのか」
 三蔵の声が険しくなった。本当に嫉妬深い。
「ッ……あ! ……いいえ」
 ずる、とゆっくり怒張を抜くようにして腰を引かれる。
「じゃあどうしたんだ」
 腰を引いたまま、三蔵は揺らした。そのまま、上体をうつむけ、悟能の胸にかわいらしい飾りのようについている乳首をぺろりと舐めた。
「……ひッ……床に置いて、床に……」
 自分の手で挿入するには、その玩具は大きくて無理だった。だから
「さんぞ……さまに……されてるって……おもって……」
 三蔵に、されていると思いながら、床に張り型を置いて、その上へゆっくりと腰を下ろしたのだ。 既に小さいのと中くらいのでほぐされていたので、大きなモノも肉の環はおいしそうに飲み込んでいった。
 卑猥な光景だった。床の擬似男根で自分を貫き、三蔵の名を呼びながら喘ぎ狂う美童。甘い甘いあえぎと声が部屋中に響き渡る。それでも達することはできない。ひもで縛められて、射精できない。まるで拷問だ。
「気を失いかけて……気がついたら、このお部屋に連れてこられて」
 凄艶な微笑みを浮かべる。
「僕、ずっとずっと、さんぞ……さまにあいたかった」
 甘い告白を幼い唇がつづる。
「自分で慰めていたときも……ずっと三蔵様のことを」
 ぎゅ、と自分の上で腰を振る三蔵へ手を伸ばし、いっそう強く抱きついた。
「好き。三蔵様、大好き……」
 三蔵も、身体の下の美童をきつく抱きしめ返した。
「あああッあああッあッ」
 挿しつらぬく肉棒の感覚が淫らで耐え切れない。とろとろと低温の火であぶられるようだ。ぴくぴくと肉筒が、粘膜がふるえてわななく。
「俺のためにそんなに 『したく』 してたのか」
 こくこくと悟能が身体の下でうなずく。
「ごほうびにいっぱい抱いてやるぞ」
 抱えていた少年の両脚を抱えなおした。悟能の白く細い右足の、指へ唇を近づける。
「あ……ッ」
 ねっとりとした舌づかいで、三蔵は足の指を一本ずつ口にくわえてしゃぶった。舌先でそろそろと舐めあげるようにする。腰をよりひきつけ、深く深く奥まで突いた。
「ひぃッ」
 悟能ががくがくと痙攣する。
「イッちまえ」
 口に足の指を含んだまま、くぐもった声で最高僧が告げる。
「ああああッああッああああッ」
 激しく震えながら、悟能はまた達してしまった。とろとろと屹立から精液をあふれさせている。
「また、たくさん出たじゃねぇか」
 卑猥な口調で三蔵がささやく。わざとその大きな手で、達した悟能の屹立を握りこむ。べっとりとその手に白い精液がついた。
「もっと出したいんだろうが」
 ぺろりと、足の小指を舐めあげた。
「さんぞ……さま」
 足の小指に音を立ててキスをひとつすると、その次は足首からくるぶしにかけて淫らな舌づかいで、舌先を走らせた。
「あああッ」
 悟能の綺麗な白い脚がびくびくと震える。もう、感じすぎて狂いそうになっていた。
「もうでないってくらい、出せ」
 震える肌を愛おしそうに、三蔵の唇が這う。
「俺もお前が欲しい。もっともっと」
 ようやく、悟能の足の指を解放すると、肉の薄いこづくりな尻を抱えなおした。
「俺はお前のことばかり考えていた。行の最中もお前のことばっかり」
 一挙動で一番奥深くまで、これ以上ないくらい硬くなった肉棒を打ち込んだ。
「ああッ」
「ずっと、お前のことばっかり考えていた。経を唱えててもずっとお前のことを」
 尻で円を描くように回す。肉棒が悟能の粘膜に当たり、惑乱するような感覚を伝えてくる。
「……好きだ」
 三蔵が身体の下の悟能をきつく抱きしめる。
「俺のために、こんな準備までしたのか。俺のためにか」
 最高僧は稚児の頭を愛おしそうに大きな手でなでた。
「ずっと一緒だ。ずっとずっと一緒だ。俺とずっと一緒にいてくれ」
 甘い懇願に、悟能はうなずいた。
「はい」
 そのまま、金糸の髪のお上人様にくちづけられる。誓いのキスのようだった。しかし、そのうち、口を割られて、舌と舌を絡めあわせだした。
「あ……」
 口と口で、舌と舌で性交しているかのような艶かしいキスだ。お互いの舌を吸いあう。
 三蔵が、どんなに、この美童を愛しているのか、伝わってくるようなくちづけだ。
 貫かれたまま、くちづけられる。愛してるともう一度ささやかれた。紫暗の瞳は真剣だ。本当に愛おしいものをみつめる目つきだ。
「悟能……ッ」
 とうとう、三蔵は自分の欲望を、愛しい稚児の内部に注ぎ込んだ。白い沸騰するような淫液で悟能の粘膜がしとどに焼かれる。
「ああッ」
 何度目か分からないが、久しぶりに肉筒を三蔵の体液でいっぱいにされ、少年も前を弾けさせるように達してしまった。
「……俺のだ。俺の……俺だけの」
 三蔵はその、まだ幼くけなげな肉体をきつく抱きしめた。




「三蔵×悟能(17)」に続く