砂上の蜃気楼(17)

 湯浴みされ、昼食が済むと調教の時間だ。
「三蔵……」
 艶めかしい仕草で八戒が三蔵の躰を引き寄せる。男を受け入れる快楽を知ってしまった彼は、以前と別人としか言えぬほどに変わり果てていた。
「欲しけりゃ自分で挿れてみろ」
「は……」
 目元をくれないに染め、八戒が熱い吐息で喘ぐ。そんな凄艶な口元に、悟浄のモノが突きつけられた。
「こっちも忘れんなよ」
 膝立ちして、顔を上げた八戒の頭を引き寄せる。
「う……」
 抵抗も何もかも砂糖のように溶けて、男達のいいなりに躰を開く。性的な玩具か人形のように。悟浄の猛ったモノへ愛しそうに八戒はくちづけた。先端を軽く舌先で舐め、ぴちぴちに張り詰めたその肉冠を唇全体で舐るようにして飲み込んだ。
「そうそう……じょうず、じょうず」
 股間で踊る柔らかな黒髪を手で撫でた。さらさらと指の間で音を立てる感触が心地よい。
「は……む」
 張り出したエラを唇で絞るようにして愛撫し、滲み出した先走りを舌先で舐めまわす。こぼれた塩気のあるそれを舐ると、悟浄の怒張はぴくぴくと震えた。
「ふ……」
 八戒は三蔵へ背を向け、その躰の上をまたいでいた。眼前には悟浄がいる。その熱い肉塊を口いっぱいに頬張っていた。
「ったく。好きモンが」
 三蔵が軽蔑したように舌打ちすると、目の前で揺れる白い背中へ指を走らせた。他の男に奉仕する淫らな姿を見せつけられ、何かが疼いていた。
「そんなに咥えられて満足か」
「……! ぐっ……ぅ! 」
 三蔵は自分の熱い切っ先の上へ八戒を無理やり座らせた。無防備なところを後ろから貫かれて八戒が目を剥く。
「あ……! 」
 三蔵に背を向けたまま、背面の騎乗位で躰を重ねる。ただでさえ自重で深く繋がる体位なのに、三蔵の硬くて太いモノをいっぱいに受け入れさせられた。
びりびりと足の爪先まで快楽が走り抜け、八戒は身も世もなく喘ぎそうになった。
「くぁ……ッ」
 三蔵の上で崩れ落ちそうになる。腰が蕩けそうだった。悦くてしょうがない。
 しかし、そうはいかなかった。悟浄に叱責される。
「おいおい。休むなよ」
「あ……ぐ」
 外れかけたモノを、悟浄は強引にもう一度咥えさせた。八戒の後頭部を両手で押さえ、自分から動いた。
「う……うっ」
 八戒の暖かい口腔内を好き放題に犯しながら、眉根を寄せる。熱い八戒の舌の感触がたまらなく悦かった。上の口で悟浄を受け入れながら、下の口で三蔵とも繋がる。腰を跳ねるように使いながら、最高僧は八戒を追い詰めていた。
「あ、あふッ……ぅ」
 悟浄ので上の口を塞がれ、喘ぐこともできない。紅潮する躰を男ふたりに串刺しにされ、身悶えるしかなかった。
「ん……」
 悟浄の双球を撫で、その後ろへ指を這わせると、硬くしこってるところがある。八戒はそれを指で軽く押した。
「……ソコもいいかも。オマエほどじゃねぇケド、俺も気持ちいーわ」
 勃ちあがっていると、外側からでも前立腺のありかはわかる。そっと八戒はそれを優しく押すようにして愛撫すると、口全体を使って悟浄を吸い上げた。
「……ッ……ダメだ。八戒」
 紅い髪の男が呻く声を聞いて、八戒が嫣然とした笑みを浮かべる。そこへ、背後の鬼畜坊主が両手で八戒の腰をつかみ、突き上げた。
「うぐぅッ! 」
 生々しい声を放って八戒が悶絶する。悟浄に犯された口元から、唾液と先走りの混じった体液がこぼれ、顎へと伝い落ちる。
「いい格好だ。丸見えだぞ……後ろからな」
 情欲を孕んだ嗜虐的な声がした。三蔵は自分の躰の上で踊る淫らな八戒を見つめていた。自分に背を向けた格好で躰の上に座り、串刺しになっている艶めかしい肉体を翻弄する。八戒が腰を浮かせると、ちょうど自分の肉塊が可憐な肉の環を穿っている様子がよく見え、ひどくいやらしかった。
「すっげぇ、いやらしいな。……今、ひくついただろ……わかる」
「あ……」
 低音で呟かれる淫らな言葉に腰が震える。三蔵のを意識しすぎて、うっかり内部で食い締めてしまい、腰奥が痙攣した。
「あ……ぐ……」
 同時に男を受け入れているため、快楽の声は湿ってくぐもった。三蔵の熱が自在にひくひくとナカで暴れ回る。卑猥すぎる感覚が繋がってる粘膜を焼き、八戒を狂わせた。
「うっ……うっ」
「イク……八戒」
「は……ぐ……」
「出すぞ」
 前から後ろから、貫かれ、汚され、犯され、八戒は下の口も上の口もオスの白濁液でいっぱいにされた。
「はぁ……あ、あっ」
 蕩けた淫ら過ぎる表情で、八戒は悟浄の放った快楽の徴を飲み込んだ。喉仏が上下し、嚥下しているのが分かる。悟浄が名残惜しげにまだ力を失っていない自分のソレを八戒の顔へ擦りつけた。粘性のある体液で端麗な顔が汚れる。上気した頬に精液がこびりついて光った。
「ん……! 」
 糸を引くそれで顔を汚し、八戒は再び下肢を襲う淫靡な感覚に躰を震わせた。
「こっちを向け」
 三蔵はまだ満足しないらしい。抜かずに自分の上にいる八戒の躰をまわす。甘い悲鳴が漏れた。
「顔を見せろ」
 穿たれたまま、下から三蔵の紫暗の瞳で見つめられる。最高僧の上で串刺しになったまま、八戒は震えた。……もう、何をされても気持ちがよかった。
「あ……」
 びくん、と仰け反って喘いだ。一度放出した三蔵のが、再び力を取り戻し、脈打ちはじめたのが粘膜越しに伝わったのだ。三蔵にとって、八戒の性の歓喜に喘ぐ表情は媚薬に似ていた。一度果てても、その凄艶な顔を見てしまうと、何度でも抱き、残酷な快楽に突き落としたくなる衝動が湧いた。
「さんぞ……ダメ……で」
 整わぬ息を吐き、八戒が喘ぐ。すかさず、後ろから悟浄にぷつりと起ち上がった両の乳首を摘ままれて、わなないた。
「ああッ」
 悪戯するように捏ねまわされる。連動して肉筒がぐちゃぐちゃに収縮した。内部にいる三蔵を締め上げてしまう。
「……食いちぎる気か。てめぇは」
 三蔵の口元になんともいえない淫らで人の悪い微笑みが浮かんだ。八戒の捨て置かれている性器を指で弾いた。大量の先走りでべとべとになってはいるものの、三蔵が穿つ場所を加減したためか、精液を放ってはいない。また、射精なしで極限状態に追い込むつもりなのだ。
「自分で動いてみろ。できるな」
「う……」
 三蔵は貫いたまま、自分から動こうとはせずに囁いた。残酷な言葉に、八戒の躰はいっそう紅潮した。
「早くしろ」
「っ……」
 鬼畜坊主の求めに応じ、諦めたように手を後ろに突き腰を浮かせた。そしてそのまま、三蔵の肉棒に自分の内壁を擦り付けるように腰を回した。一番、太い部分で敏感な場所を擦るようにしてしまい。八戒が熱い声を放つ。
「あ……! 」
「ココか」
 口端で笑うと三蔵は、八戒の反応した場所を擦り上げるように腰を使って突き上げた。浅く入り口に近いところで肉棒を遊ばせる。カリ首で肉の環をめくりあげるように抜き挿しした。
「ひッ! 」
 悲鳴が八戒の唇から漏れる。躰をふたつに折って身を捩り、無意識に逃れようと腰を浮かせる。その動きを追うようにして三蔵は八戒の腰を両手で引き戻して貫いた。
「は……! 」
 がくがくと痙攣する。ひどくイイトコロに三蔵のが当たってしまった。目の焦点が合わなくなるほどの快楽が走り抜け、脳が痺れた。
「ああ! ああッ」
 ひくひくと三蔵を飲み込んだまま、肉の環が痙攣した。
「あああッ」
 瞬く間に八戒は達した。躰が痙攣と弛緩を繰り返す。びくんびくんと収縮し、甘く熱く緩む粘膜はひたすら快楽を貪っている。
「イッた? 」
 悟浄がこりこりと硬くなった乳首へ手を這わし、背後からカフスの嵌まった耳たぶを噛む。
「う……やぁッ……ごじょ……や……」
 達した躰にはどんな行為でも辛いらしく、八戒が舌も回らない様子で懇願する。その間も、八戒の肉筒は震えてとめどがない。
「あ……」
「……オマエ」
 三蔵は美麗な面に淫らな笑みを浮かべた。舌なめずりしそうだった。
「腰……動いてるぞ」
「や……ッ」
 もう、止まらなかった。何度でも達してしまう。躰がいうことをきかなかった。心を置き去りにして、肉体は悦びを追って蕩けきっていた。自分から、感じるところへ擦りつけよがってしまうのを止められない。
「すっげぇな。俺は動いてねぇぞ。……尻振りやがって」
「あ、あああッああッ」
「何度イク気だ。ひでぇ淫乱だな」
 揶揄されようと、辱められようと、腰が動いてしまうのを抑えることはもうできなかった。三蔵の躰の上で跳ね踊るようにして、八戒は肉欲を貪っていた。男に抱き抜かれ、すっかり開発された躰は、味わう快楽の底も見えてこないほどだった。……ひどく淫蕩だった。
「あーッあーッああッ」
 激しい咆哮するような声が出てしまう。もう限界だった。狂いそうだった。立て続けにやってくる凶暴な快楽の波に翻弄されるまま、自分から尻を揺らして立て続けに達してしまっていた。頭の中が真っ白になり、羞恥を感じることもできなくなっているのが、唯一の救いといえばいえた。
「いやらしいヤツだ。自分がナニしてんのか、分かってんのか」
「あ、ああッ……ああ」
「コイツを埋められて、そんなに嬉しいのか淫乱」
 三蔵が埋め込んだ性器をわざと揺らした。
「う……うッ」
「嬉しいって言ってみろ」
 三蔵には、何もかもが丸見えだった。快楽に喘ぐ八戒の顔も、淫らなその躰も、自分のを呑み込んで揺れる腰も……。
「は……イク」
 何度も後ろだけで達し、意識が白く染まってゆく。
 
 その後は、
 自分の手で男達のモノを挿入することを求められ、挿入すると自分で腰を使って動くことを求められた。何度も恥ずかしいことばを言わされ、何度も何度も後ろだけでイカされた。
「欲しい……欲しいです……×××が……」
 陶然とした表情で、抵抗なく淫猥な言葉を言うことを言えるようになるまで、徹底的に調教された。躰の奥で精液が熱い毒のように拡がる。男達の残滓が滴る感覚に舌なめずりしながら八戒は気を失った。

さ らさらと敷布に拡がる艶やかな黒髪を一筋すくい、黒衣の男が呟く。
「完成に近づいた……かな」


 連日続く性的な拷問で、八戒はすっかり魂を壊された人形のようになってしまった。

 庭で、もう一輪、芥子の花が静かに散った。



「砂上の蜃気楼(18)」に続く