ウロボロスの夜(2)

「ぐ……」
 喉の奥の奥まで、悟浄のでぎっちりと埋められる。
 えずいて生理的な吐き気すら催すような容赦ない口腔性交を求められて八戒の目元から透明な涙が零れ落ちた。しかし、犯されているのは口だけではない。
「……!」
 下からまた、自分の存在を思い知らせるかのように三蔵が突き上げだした。八戒が三蔵の膝上で跳ね踊るように身をくねらす。
 八戒の口元から、悟浄の猛ったものが外れる生々しい音がした。それほど、三蔵の突き上げ方は激しかった。
「は……やぁっ……!」
 八戒は口淫をやる余裕などどこにもなさそうな表情で、三蔵の激しい突き上げに完全に翻弄されているようだった。
 悟浄は外れてしまったのを名残惜しそうに、八戒の顔をそのペニスでぴたぴたと撫でまわした。
「ふ……」
 悟浄のに顔を叩かれることに気をとられていると、三蔵が穿つ律動を次第に激しく狂おしいものにしてゆく。深く深く抉られた。
「ひ……!」
 浅く、深く。三蔵は八戒の腰骨に手をかけると、自らの腰を左右に揺らすようにしてそのしどけない躰をきつく抜き挿しした。
 浅いところで遊ぶように三蔵のペニスを出し入れされると、ぐちゅぐちゅと淫らな音が激しく立ち、身も世もなく骨まで溶けていくような心地がした。
 浅く立て続けに穿たれて、自然に足が突っ張るような動きになり、内股が細かく痙攣する。
 そのまま好き勝手に八戒を貫いていた三蔵だったが、ときおり変則的に深く軋むほど奥の奥まで八戒をその腕に抱いて咥え込ませた。
 ただでさえ自重で深く繋がる体位なのに更に押し込むようにされて、八戒は悲鳴のような声を放った。
「やぁ…っやぁ……あ」
 狂ったような声を放って八戒が悦がる。
「おいおい。俺の方が完全にお留守になってんですけど」
 悟浄は苦笑いをすると、八戒の右手を掴み、いまだに天を仰いでいる自分のものを握らせた。
「口が無理なら、手で我慢してやんよ。ホラ」
「……あ」
 悟浄は自分の手を重ね合わせるようにして、八戒の手を怒張ごと握りこんだ。そのまま上下に扱きだす。
 すぐに悟浄の先端からの透明な分泌物で指は濡れ、くちくちと鳴った。悟浄がその精悍な顔立ちを快楽に歪ませる。
「はぁ……あっ……」
 一方、既に八戒の躰に溺れている三蔵は、きつく八戒の背をしなるほど抱きしめた。腰骨をめりめりと裂くほどに繋がることを求められて、八戒が高い声で啼いた。
「ああっ……! 」
 悟浄へと、手をのばしているため八戒の躰にはやや捻った格好になっている。そのため眼前にさらされた綺麗な首筋に三蔵は舌を這わせた。
「……! 」
 ぐぷ、と卑猥な音とともに、八戒の肉筒がきゅきゅっと収縮する。その媚肉に締め上げられて、三蔵が眉を顰めた。
「……! 」
「ひ……! 」
 逃れようと浮いた、八戒の腰を両手で押さえつけて、同時に腰で捏ねるようにして回すように穿った。耐え切れずに八戒の背がまるで電撃で打たれたように反った。凄まじい快美感にふたりとも目の前が真っ白になる。
「ああっぅ……もうッ……!」
「……出すぞ」
「くぅうッ! 」
 三蔵の腕の中で悦がり啼きながら、八戒も自分を放ってしまった。
 それに遅れるようにして三蔵が悦楽の白い徴を八戒の粘膜へと注ぎ込む。
「は……」
「ん……ふ」
 八戒は力の抜けたその躰を、三蔵の腕の中に預けるようにして浅く息を吐いていた。
 しどけないその躰に飽き足らない三蔵が八戒の腰を捉えてまた抱こうとする。
「ちょっと、次オレな」
 悟浄が恨めしそうに言った。
「我慢できねぇか」
 八戒の躰に未練のある三蔵がまるで咎めだてでもするかのように遮る。
「できるワケないでしょ。ったく八戒のヤツお前が動くと何もかもブッ飛んじゃうみたいでオレ放置されちゃってた。ひでぇ」
「しょうがねぇな」
 舌打ちをひとつすると、三蔵は腕の中の八戒を乱暴にそのまま横倒しにした。
 当然、三蔵と繋がっていた下の口から、ぐぷ、と卑猥な音とともに三蔵がずるりと抜けた。躰からペニスが抜け出る感覚に八戒がその身をびくびくと震わせて蒲団の上へと倒れる。
「あ……」
 ひくんひくんといまだに震える感じやすい躰を震わせる八戒に、悟浄が手をかけた。
「お待ちどうサマ。八戒ちゃん」
 そう言って、八戒の膝裏に手をかけ、脚を割り開いた。いまのいままで三蔵に貫かれていた箇所を検分するかのように眺める。その目つきの熱っぽさに、八戒が視線を遮ろうと手を伸ばした。
「いや……です。悟浄……見ないで」
 自分が男に貫かれた箇所を舐めるように見つめる親友に八戒は哀れっぽい声を出した。居たたまれない。
 しかし、悟浄はその八戒の哀願を無視した。眼前には散らされた花があった。慎ましやかだった蕾は、それまで加えられていた淫虐の行為によって綻び、口を開けてひくひくと淫らに喘いでいる。
 しかも。
「……三蔵のが出てきそうじゃねぇ? 」
「! 」
 八戒は屈辱からか、それとも羞恥からか、目元に朱を刷いたようになった。
 確かに三蔵に犯された後ろからとろとろと何かが垂れ落ちてゆく感覚があった。なんともいえない卑猥な感覚だった。
 悟浄の眼前には、鬼畜最高僧の放った精液が八戒の下の口から垂れているのが見えているのだろう。ひどく淫猥な光景だった。
「もったいねぇ、俺が栓しといてやんよ」
「ひ……! 」
 悟浄の動きは素早かった。八戒に抵抗する暇も与えず、既に三蔵が八戒を犯すところを見せつけられて痛いほどに反り返っていたソレで後孔を穿った。
 ゆっくりと腰を回すようにして、奥まで挿れる。
「うっ……あッ……あっ」
 がくがくと、八戒の躰が揺れた。達したあとの敏感な躰をまた別の男に貫かれる。今度は正常位で責めたてられた。
「オレと三ちゃん、味はどう? 違う? 」
 悟浄は情欲に支配された表情で、八戒をゆっくりと貫きながら言った。殊更焦らすように腰を引いて犯した。
「……! 」
 思わず引き抜かれるそれに、恥知らずにも名残惜しげに絡み付いてしまう。
「くぅっ……あ、あッ」
 思わず甘い蕩けるような声が漏れる。
「うは、いい声。たまんねぇ。下手なエロビデオよりクルわ。お前の声ってば」
 悟浄は卑猥なことを言いながら、嬉々として八戒の躰を挿し貫いた。腰を捏ねまわすようにして、八戒のイイトコロに当たるように突く。
「ふぅッ……や」
 八戒はしかし、声を殺そうとしていた。
「なんだ。声だせ、聞かせろ」
 傍らで、悟浄と八戒の濃厚な交合を眺めていた三蔵がそれを咎める。自分のいまだに硬度を失わない肉塊で快楽に歪む八戒の顔を叩いた。
 弾力があるそれが顔の皮膚を弾く感覚にまで反応してしまう淫蕩な自分の躰を呪いながら、八戒が切れ切れに言った。
「は……恥ずかし……い……っ」
 その絞りだすような声に、三蔵は酷薄な笑みを浮かべて笑いだした。
「く、くっくっく……く」
 再び先走りの滲み出した先端でねっとりと八戒の顔を舐めまわした。粘性の低い体液で八戒の顔が光った。
「恥ずかしいねぇ」
 それに呼応するように悟浄も笑った。
「んなこといったって、オマエ腰動いてんじゃん…イイんだろ? 」
「あ……! 」
 屈辱的だった。
 既に三蔵の精液に塗れた内部に悟浄を受け入れている。
 三蔵の体液と悟浄の先走りが混ざりあって掻きまわされる世にも淫らな感覚に耐えるのに八戒は必死だった。
 しかし、敏感な躰はそんな八戒の精神を裏切るようにして自分を犯す男達を嬉々として受け入れてしまっているのだ。
「やだ……やだっ! 」
「素直にならねぇとためになんねぇぞ」
「そうそう」
 ふたりがかりで無理やり犯されて、八戒の躰が蕩けた。身を捩り合せるようにして、悟浄の背にしがみつく。
「ごじょ……ごじょっ」
 白い綺麗な指が、悟浄の厚みのある背に回され、戦慄くように震えた。
「んーっ。かーわいい。たまらねぇ。声はえっちだし、アソコは絶品だし。オマエってば最高ッ」
 ぐぷ、と悟浄のペニスが奥まで挿れられる。
「……! 」
 声にならない悲鳴を上げて、八戒がその目を見開いた。
「は、はぁっ……も……う」
 八戒が荒い息をつきながら、哀願するように口を開いた。そこへすかさず三蔵の肉塊がねじこまれた。
「ぐふっ……! 」
 なんとかそれから逃れようと、頭を逸らすが、三蔵の腕で羽交い絞めにされる。
「ちゃんと咥えろ。慣れてねぇのは分かるが、早く覚えて上手になってこっちでもイカせろ」
 八戒が首を振って逃げようとするのを、三蔵はその顎を手で捉えて叱った。
「ちゃんと舌使え。じゃねぇと勝手に喉まで突っ込むぞ」
 三蔵とのやりとりの間も、悟浄は八戒の後孔をその腰を回すようにしてゆっくりと抜き挿ししている。
 変則的に躰の中を行き来するその動きに、喘ぎそうになるが、口を三蔵に犯されていて、快楽を逃がしきれない。
 追い詰められて、八戒は行き場のなくなった舌を三蔵に絡めた。柔らかい蕩けるような舌の這う感覚に、三蔵の眉が快感できつく寄せられる。
「そうだ……やればできるじゃねぇか」
 三蔵が初めて褒めた。
 首を横に向けて、頭を三蔵の膝に乗せるような苦しい格好で、下肢を悟浄のいいように貫かれている。
 抉(えぐ)り回されて上がりそうになる悲鳴の代わりに、その舌を震えるがままに三蔵に這わせる。他に方法がなかった。
 段々と、八戒の口淫は男が欲しい気持ちのままに這い回るいやらしい動きに化けた。悟浄に穿たれる快楽をそのまま紛らわせようとするかのような舌の蠢きだった。
 嬌声を上げる代わりに、八戒は三蔵のものを口いっぱいに頬張っていた。
「ぐ……む」
 ぱんぱんと、下肢に悟浄の腿が当たる音が響きだす。相当深い交合に八戒が尻をくねらした。そのいやらしい動きに悟浄が目を細めた。
「たまんねぇ……やらしすぎ、オマエの躰。もーオレ出る」
「……! 」
 八戒の敏感なトコロをことさら甘く擦り上げるような動き方をしだした悟浄に八戒が身悶えた。
「止めて……もう……それ…だめぇッ! 」
 がぽ、と音も生々しく三蔵のが唇から外れてしまう。
 それを許さないとばかりに三蔵の腕が、再び八戒の後頭部を押さえつけるようにして、外れたペニスを咥えさせた。
「…………ぐッ!!」
 次の瞬間。
 下も、上の口にも雄を咥えさせられたまま、八戒は逐情してしまった。下肢をしとどに白い粘液でべたべたにしてしまう。胸元辺りまで飛び散ったそれは、当然悟浄にもかかったが、それに頓着しない様子で紅い髪の男前が口元を歪めた。
「……また、イッちゃった? いいぜ、何度でもイケよつきあうぜ」
「ふぐッ……! 」
 達したばかりの敏感な躰を激しく責めたてられて、八戒がくぐもった声を上げた。口は相変わらず、三蔵に犯されたままだ。
 そのうち、八戒を上から下から、前から後ろから貫く男ふたりも、耐え切れずに躰を震わせて達した。
八戒の口に、八戒の後孔にふたり分の精液が注ぎ込まれる。
「は……スゲ……」
「う……ぁ」
 どぷ、と肉筒にたっぷりと中だしされる。
 その感覚に思わず、がくがくと躰を痙攣するように震わせていた八戒の口元から三蔵のそれがはずみで外れ、放出の途中だったそれは、八戒に降りかかってその顔を白く汚した。下も上も、顔も腹も尻も精液塗れになった。
「ふ……ん」
 ひくんひくんと躰を震わせて達した余韻に浸るそのしどけない躰を、息を荒げて見守っていた三蔵と悟浄だったが、八戒に落ち着く間も与えず、その腕を捕らえ再びその躰を組み敷いた。
「や……です! もうこれ以上……は」
 八戒の抗議を獣になってしまった男ふたりが聞くはずは無かった。
「うるせぇ。悦すぎて、後五回は出さねぇと気がすまねぇ」
「気があうねぇ、三ちゃん。オレもちょうど今そう思っていたとこ」
「あなた達ッ……! 」
 もう、これ以上躰を精液でべたべたにされるのは嫌だった。顔から三蔵の白濁液をぽたぽたと滴らせながら、八戒が身をよじった。逃れようとするその躰をふたりがかりで押さえつけながら悟浄が囁いた。
「クイズです。これから挿れるのはオレと三蔵、どっちでしょう? 」
「まぁ、当たってても、止めてはやらんがな」
 悟浄と三蔵はそう言うと、八戒の躰を裏返した。力の抜けた八戒がうつ伏せになる。その腰を高く上げさせて、……男達のうちどちらかが、ペニスを宛がう感覚が下肢に走る。
 次の瞬間それは、勢い良くずぶずぶと入ってきた。
「あーっあーっあー……」
 挿入された瞬間、ぞくぞくするような快美感が背を焼き、八戒は再び前を弾けさせた。
「んとにこいつ……敏感」
 悟浄がくぐもった笑い声を立てた。崩れ落ちそうになった腰骨を掴まれて、とろとろになった粘膜の奥まで貫かれる。
「やぁッ……」
 八戒は脳を白く焼くような性の快楽の極みでとうとう意識を手放した。



 それから。
 とうとう、朝まで八戒は悟浄と三蔵にそれからも繰り返し代わる代わる抱かれた。
 貫かれ過ぎて、脚の間に何か挟まってるような感覚が自然にしてくるほど、ふたりがかりで犯された。今まで、こんなに脚を開きっぱなしにされたことはない。
 時折、後孔の滑りが多すぎるのに、閉口したような三蔵から、立つように求められ、がくがくと震える脚で無理やり立たされると、後ろの孔からとろとろと精液が腿を伝って流れ落ちてきた。
 後から後からそれは脚を伝って八戒の足元の蒲団を濡らした。
「もう、こんなにたくさん……これだけ出せば気がすんだでしょ。もう……」
 三蔵が、哀願する八戒の髪を鷲掴みにするとそのまま、飽きもせずに蒲団に引き倒した。八戒の顔が絶望に翳る。
「気なんかすまねぇよ」
「そうそう」
 悟浄が同意した。
「お前はもう、これから先もずっと……俺と悟浄の……オモチャな」
「オレらの大人のオモチャね。違いねぇや」
 鬼畜に笑いながら、ふたりの男は営々と八戒を組み敷いた。
 何度も受け入れさせられているうちに、八戒は自分に圧し掛かるふたりの躰を穿つリズムの違いや、肌の感触の違いや、貫くときの腰の角度、体側の厚みの違いに気づいた。貫かれているときに、そのしなやかな脚を、相手の腰に回すようにして絡めると、肉の感覚が悟浄と三蔵ではやっぱり違う。
 そしてぐちゃぐちゃに自分の躰の中で暴れまわる性器の淫らな感触の違いも……。
 八戒は泣いていた。きつい容赦のない情交を果てもなく求められて、獣のように、悦がって泣いていた。
「う……も、狂っちゃ……う」
 淫らな蛇のように。情交は終わることなく。
 眦(まなじり)から涙を溢しながら、八戒はびくびくと躰を震わせた。その白く艶めかしい背に、再びふたりの内のどちらかが、圧し掛かる。
「狂えよ。付き合ってやるから」
 熱い性器が宛がわれる感触の後、奥深くそれを埋め込まれた。八戒は喘ぎながらこの感触はどちらだろうと、下の口で締め付けて味わいながら腰を揺らした。
 腹筋を使って相手が捏ねまわすように自分を穿つのが分かる。それに合わせるようにして、尻をよじり回しながら、八戒は声を上げて甘く啼いた。
「あ……もう……イク……」
夜は……終わらない。



「陵辱(1)」に続く