内所ないしょの囲い者


(楼主 清一色の内所にて)

 今日は遅かったじゃないですか。え、そんなに急かすと壁の景徳鎮を倒して壊してしまう?  別にいいですよ、こんなもの壊れたって。アナタが来てさえくれるなら。
 二階のお座敷にいたんですか。座敷がひけて、まっすぐ我のところに来てくれたんですね。うれしいですよ猪悟能。……ん……ッ 相変わらず……柔らかくて……蕩けるような唇ですよね……は……ッ。

 ……悟能、我の大切な悟能。

 あ、そうそう、ちょっと冷めてしまったんですが、夜食はどうですか。何も食べてないでしょう。
 吹き寄せ卵に、平目を蒸したもの。鮑の煮たのと、ジュンサイの炊き合わせ。出汁を廻しかけてあるみたいですね。それからシソのおむすびもありますよ。おあがりなさい。
 え、なんです、太鼓持ちが食べるには高級すぎる? ですか? クックッ、「百川楼」 や 「八百善」 ほど高級な店からのじゃないですから、そう怒らないで下さい。
 いいじゃないですか、太夫や花魁たちの夜食はウチではこんな感じですよ。出入りの料亭に頼むとこんな風です。気に入りませんか。ほら、甘いのがお好きなら金柑の蜜煮もありますよ。どうしたんですか、機嫌なおして下さい。

 アナタを女郎扱いしている? しかたありませんよねぇ。実際、アナタを知って、ウチの客が花魁に夢中になる心地をようやく我も知ったんですからね。どんな呼び出しの花魁なんかより、我はアナタが大切ですよ、悟能。
 だから、もう他の座敷に出るのなんか、止めてください。他の男がアナタを見ること自体が耐えられない。おかしいな、あの茶屋の内儀にはアナタへもうあまり仕事を入れるなと言っておいたハズなのに。我からも金をとっておいて、アナタを働かそうなんて、まったく欲の皮の張った内儀だ。今度、ひどいめにあわせてやりますよ。
 悟能、いやもう今は八戒でしたっけ。だから……我を嫌わないで下さい。
……そうですね。もう桜も見納めでしょうか。今夜は風が強いですからね。もう吉原の大通り、仲之町の桜も片付けどきですねェ。
 そんなに外の音が気になりますか? だいじょうぶ。こんな内所の忘八のところなんて誰も気にしていませんよ。
 チントンシャン。まぁ、でも今夜はだいぶ三味がうるさいですね。景気のいいお方が何人も遊んでおいでだ。まぁ、そのうち、「お引けェー」 って床廻しがふれてまわって、この楼もしんとなるでしょうよ。
……しん、となった方が、アナタのかわいい声が漏れ聞こえやしないかと、我はそちらの方が心配ですが。
……ク、クククッ、そう怒らなくても。いや、アナタは怒った顔も綺麗ですけど、そう怒らないで下さい。ええ、ええ、すいません。我が悪かったです。口が悪いのは生まれつきですよ。知ってるでしょう? 不用意でした。許して下さい。
 あ、結構、食べられたみたいですね。おいしいでしょう、それ。出汁の沁みた餡が絶品ですよね。
 食事はもういいですか? よかった、口にあったようですね。それじゃあ、我と……今夜も遊びましょう。

 愛してますよ。猪悟能。

 ええ、死んでもいいくらい、アナタを愛してますよ。

 知ってるくせに。

 三蔵とのことは知っていても、アナタのことが好きですよ。大好きです。
 この綺麗な緑の瞳も、やさしげな唇も、艶のある黒髪も、なにもかも。
 ん……ごの……悟能、もっと舌を出してください。逃げないで。
……はッ……ダメですよ。脚は開いていて下さい。何がもうやめてなんですか、許しません。始まったばかりですよ。猪悟能。まだまだ、舐めて欲しいでしょう。ここも、ここも。ひくひくしちゃっていやらしい。ホラ、こんなに、お腹につくくらい、反ってますよアナタの。恥ずかしいくらい感じやすいんですね。触るとびくん、ってふるえる。
 どこがいいですか。もっと舐めてあげますよ。先端? それともこのくびれ? それともこの下の方? ああ、分かりました。裏筋が一番、いいんですね。こんなに、跳ねるくらい悦こんでくれるとうれしいですよ。
 やめて、ってやめるわけがないじゃないですか。出ちゃう? 出していいですよ。ホラ、もう、限界なんでしょう?アナタが射精するのをこうして見ててあげます。
……ね。 いっぱい、でましたね。白くて濃いのが。こっちはどうです。ああ、分かりました。また油で慣らしてあげますね。
 うれしいですよ。少なくともこの硬さじゃ……昨日は誰にも抱かれてないんですね。いけないひとだ。自分のことを太鼓持ちだなんて思ってるのは、自分だけだって自覚なさい。こんなに淫らな身体をして、男たちを迷わしているくせに。太鼓持ちだなんて図々しい。
 ええ、アナタなど花魁以上の淫売ですよ。淫売屋の主人の我が保証しますよ。分かっているんでしょう? ホラ、我の指を何本も飲み込んでいきますよ。気持ちいいですか。いいんでしょう? いやらしいひとだ。
 バラの蕾というより、卑猥なカタチをしてますよね。それなのに、これに挿れたくってしょうがない気持ちにさせられる。なんて悩ましい孔だ。こっちも舐めてあげますよ。気持ちいいでしょう? ホラ、びくびくしちゃって……いやらしい身体だ。
 いやらしい。素質ですよね。男に抱かれるためにあるみたいな身体だ。中と外、どっちが舌で舐められるときもちいいですか、中の前立腺側なんでしょう、痙攣してますよ。言わなくても分かります。ホラ……じわじわ蕩けてきた。
 もう、早く抱いて欲しいでしょう。もう肉が痙攣して……我慢できないでしょう。我の舌にまで伝わってきますよ。ふるえてふるえて。もう、埋めてほしいですよね、男ので。いやらしい肉だ。言ってごらんなさい。言わないとあげませんよ。

 言えない。そうですか、かまいませんよ。

 すごく、痙攣してますね。またイッたんですか。我は何も触ってませんよ。
 ああ、もう止まりませんね。うしろがきゅうきゅうしてますよ。舐めてあげます。襞のひとつひとつ舐めてあげますからね。きゅうきゅう、痙攣している上から舐められるとどうですか。
……すごい声ですね。イイ。我などアナタのその、本気で達してる声だけでイケそうですよ。あげませんよ。ちゃんと、言葉で言ってください。我が欲しいなら、そのかわいい唇で我を……呼んで。
……ああ、こっちも勃ってる。乳首も痛いくらい硬いですね。こっちも舐めて欲しいでしょう。ク、ククックッ。素敵な声ですね、猪悟能、喉が枯れてきましたか。かわいそうに。
 身体がおかしい? 身体がおかしいですか、悟能。ク、クククッ。さっきの食事、警戒しませんでしたねぇ。アナタ。
   そう、慣れない女郎にとっておきの薬を仕込むことが吉原ではありましてね。それを……アナタに。
 ウチの楼の秘薬ですよ。許して下さい。ね、もう男が欲しくて仕方ないでしょう。ね、もう男をイヤがることなんてできなくて……突っ込んで欲しいでしょう、熱くて硬くて太いのを。……ここに。
 ク、クックックッ。鬼畜だなんて、褒め言葉ですよ。早く言って下さい。アナタのその言葉が聞きたいだけですよ。そのかわいい口から、淫らな言葉が聞きたいだけです。
……ああ、そう。そうです。その言葉ですよ。口から涎をたらして、なんてなまめかしい。
もう一度、言って下さい。
 ああ、そうです。我の名前も呼んでください。ああ、アナタのその声で、我の名前が呼ばれるなんて。ああ。
 欲しい。そうなんですね。我が欲しいんですね。本当ですね。嘘なら、この足首をつかんだまま、このまま一晩、動きませんよ。え、後生だ? ……そんな顔されると弱いですよねぇ。
 挿れてあげます。猪悟能。いやらしい言葉が言えたご褒美ですよ。ホラ、……なんて声ですか。はしたない。つつしみのない。そんな顔で三蔵にも抱かれているんですか。妬けますね。最初はいり口をそっと突いてあげますね。
……ンッ……ああ、本当に……沼みたいな……ああ、イイ。
 悟能、悟能、お願いです。こうやって奥まで突いて抱いてあげます。だから、……男は我ひとりにしてください。いや、あの三蔵のことは我もしかたなく諦めます。でも他の男は許しません。
 ああ、イイ。イイですよ悟能。こんなに痙攣して……またアナタ、イキましたね。ダメです。イッても犯してあげます。ホラ、我のを奥に……ね、出してあげます。
 ふ、精液を出される感触にも感じるんでしょう。いやらしいひとだ。だいじょうぶ、ずっと抱いてあげますから。奥に、擦り付けられるのがわかりますか。前立腺に、ごりごりあたってるのも? 
……もう、しゃべることができないくらい、酔ってますね、アナタ。今、なんて言いました? シテ欲しい? 我のことがもっと欲しい? アナタにそんなことを言われるだけで……ガチガチに勃ちますよ。アナタからそんな言葉が聞けるなんて……もう死んでもいい。

 本当に愛してますよ。我の大切な猪悟能。一生大切にしますからね。
 



   「楼主の囲いもの」に続く