温泉卓球(2)

「おっと。あんまり動かないでくれるー? 舐めにくいんだよね」
 悟浄が力強い腕で、八戒の腰を押さえつけた。ぞくりとするような悟浄の舌の感覚が粘膜に伝わる。八戒は喘ぎ狂った。
「ああっ……あ! ああっ……ごじょッ! 」
 悟浄の舌が離れるとき、八戒の後ろはひくつきながらわなないた。
「すっげぇ……やらしい。八戒ってば淫乱」
「っはぁ……はぁッ」
 荒くなってゆく息には激しい快楽が滲みはじめている。
「淫乱? 今更だろうが」
 三蔵は事も無げに呟くと八戒の肉棒に舌を這わせる。尖った舌の先を裏筋に沿って舐め上げた。敏感な箇所に直接的な濃い愛撫を加えられて八戒が身をよじる。
「はぁッ! はっ……あ! はっ」
「三ちゃん、んなにしたらイッちゃうんじゃね? 」
 跳ね上げそうになっている八戒の腰を、力を入れて押さえつけながら河童が声をかける。
「イキてぇなら、イッちまえ」
 無情な言葉とともに、鬼畜坊主はつっと笛でも奏でるかのように唇を走らせた。
「あ! ああっ! あ! ぅくぅッ……僕ッ……もッ……」
 あっさりと限界は訪れた。
 卓球台の上で、男ふたりに追い上げられて。
 八戒は達してしまった。腰に緊張が走り一瞬上体を起こすようにして跳ねるとその屹立から白い淫液を吐き出した。
「ふぅッ……はぁ……ッ」
 躰の律動に合わせて放出される。全身が紅潮して桜色に染まり、艶めかしい。堕ちた八戒は淫らというのも追いつかないような目つきで白い天井を呆然と眺めている。
 そんな八戒の様子を逐一眺めていた三蔵と悟浄が唾を飲み込み喉を鳴らした。
「濃いねぇ。ほとんど固まりみてぇ」
「出してねぇからだろ」
 自分の排出した体液について、細かく批評する左右の男たちの言葉を聞かされる。いたたまれなかった。
「……溜まってんじゃン。八戒サンってば」
 にやりと紅い瞳に危険な色香と情欲を滲ませて悟浄が囁く。
「それにしても濃いな。ほとんど真っ白だぞ」
 三蔵が愉しげに口元を歪めながら、八戒の溢した精液に手を伸ばした。傷跡の残る腹部に相当量放たれたそれを指で器用にすくうと、それを放った本人の顔へ塗りつけた。
「さ、さんぞ……! 」
「な、濃いだろうが」
 くっくっくっと鬼畜坊主が笑う。
「ほんと。垂れてこないじゃん? そーとー溜まってたっしょ? 」
 それを見て河童も口端を歪めた。こちらも鬼畜な情欲の虜にすでになっている。三蔵に自分の溢した精液を顔に塗り付けられて、八戒は顔を苦しげに歪めた。
「どうして……どうして、こんなこと」
「お前がエロいからに決まってるだろうが」
「そーそー俺らが抜いてやるよ。イキたいときはお互い様ってね」
 会話が噛みあっていない。三蔵と悟浄は艶めかしい獲物の美肉を舌なめずりするようにして見つめている。
「一種の互助会ってヤツ? ……いいから力抜いてろよ」
 悟浄は三蔵がすくい取った残りの白濁液を指に絡ませ、八戒の後ろをつついた。
「は……! 」
「やれ、河童。コイツ期待してるぞ」
「何言って……! 」
「じゃーご期待にお応えして……っと」
 悟浄の指が入りこんでくる。八戒は卓球台の上で躰を海老反らせた。
「あううッ……ぅッ」
 放出されて、若干勢いの落ちた屹立がぴくんと跳ねる。
「……イイみたいじゃん」
 悟浄の声に欲情が混じる。艶めかしすぎる八戒の姿にたまらず、自分の上唇を舌で舐めて潤した。
「じゃ、これは……? 」
 指が次々と増やされる。八戒は絶叫した。のたうちまわって快楽を逃がそうとする。腰があやしくくねるのを止められない。
「駄目……ッ! 」
 八戒が痙攣した。弛緩と痙攣を繰り返しながら、悟浄の指にすっかり翻弄されている。指がある一点を擦り上げたとき、八戒は激しく震えた。
「ああ……ッ」
 目を閉じて首を激しくふった。もう何もかも蕩けてぐちゃぐちゃになりそうだった。
「ココ? ……オマエの前立腺」
「うぁ! あっ! ああっ……ごじょ」
 腰が激しくバウンドするのが止められない。肉に緊張が走り、わななき震える。もうどうしようもない。
「もういいんじゃねぇのか」
 感じすぎた八戒が躰をよじって逃れようとするのを押さえつけて、三蔵が呟く。
「だねぇ。もういい? 八戒ちゃん? 」
 どこかふざけた口ぶりで悟浄が尋ねる。
「挿れてやるよ。俺の……」
「…………! 」
 ぐちゅ、と悟浄の肉塊が埋め込まれてゆく。がりりと八戒が手元の卓球台に爪を立てた。
「ひっ……! 」
 太い悟浄の怒張をゆっくりといれられた。なんともいえない感覚に八戒は卓球台の上で息を深く吐いてその生々しい感覚に耐える。
「……すげ。あっさり入った」
「素質だな。淫乱が」
 三蔵が八戒の手をとって自分の脈打つものへと導いた。
「次は俺だからな」
「……! 」
 口を開こうとした八戒だったが、悟浄に根元まで深く埋められて呻くことしかできなかった。仰向けに押さえつけられて、後ろに悟浄の、手には三蔵の怒張を握らされている。
 ぐぷ、と挿入された性器と蹂躙されている粘膜が擦り合わされて淫らな音を立てた。
「ん…………んん」
 ずるりと悟浄の長大なものが引かれる度に、八戒が肌を震わせる。紅い髪を官能的に振り立てながら、悟浄は腰を使っていたが、浅いトコロで遊ばせるようにすると、八戒の唇から鼻に抜けるような甘い吐息が漏れることに気がつき、腰を小刻みに振った。
「あ! あっあ! 」
 甘い、甘い悲鳴が上がる。
「いいんだ? ココ」
「すげぇ、腰動いてるぞ。いやらしいヤツだな」
 蔑み、揶揄するような悟浄と三蔵の声が聞こえるが、背筋を駆け上るようにして快楽が電流のように駆け、脳を白く焼く。
「はぁッ……あっ……ごじょ」
 卓球台の上で、快楽に身悶えるしかない。八戒の眦からひとしずく涙が落ちた。こんなひどいところで二人がかりで犯されているのに、躰は感じきっていた。
 自分でも後ろが悟浄をくわえこみ、きゅうきゅうと悦こんでいるのが分かる。下腹に力が入り、自身の屹立も快楽に反応してひくひくとわなないていた。
「や……めて……ご……じょ」
「またまた。八戒サンったら、こーんなに悦びまくってるのに、ヤメテなんて、ジョーダンでしょー? 」
 細い腰を淫猥な仕草で穿って追い詰める。悟浄の大きな手がかたちを取り始めた快楽の徴を握り込んだ。途端に、恥知らずなほどに甘い八戒の嬌声が卓球室に響いた。
「くッ、くぅ……あ」
 悟浄に好きにされている腰から下が、とろけてどうしようもない。縋るような目つきで八戒は、傍らの三蔵を流し見た。鬼畜坊主が紫暗の瞳で視線を正面から受け止める。
「……河童だけじゃ足りねぇか。すぐ俺のを喰わせてやるから、おとなしくしてろ」
 助けを求める視線も、三蔵には艶を含んだ誘惑に見えるらしい。
 もう、助けなどどこにもなかった。淫虐の拷問室に変わり果てた場所で、二人分の濃厚な愛撫に翻弄されて喘ぐしかなかった。
「違う……違います……さん……ぞ」
「嘘つけ。『もっと欲しい』って目だったぞ。今のは」
 三蔵は口端で冷たく笑い、八戒の手を借りて自分のそれを擦り上げている。
「河童、もう終われ。早く俺にされてぇそうだ」
「……何言っちゃってんの。こんなイイとこで終われるワケないでしょーが」
 卓球台の上で襲って縛り上げてしまったので、その整った口を無理やりこじ開けて犯すこともできない。
 悟浄のが挿入されるのに合わせて、その尖った乳首を舐め回し、八戒を悦楽へと叩き落としていた最高僧だったが、段々見ているだけでは我慢ができなくなったらしい。
「あッ……あ」
 ふたりが言い争う間も、八戒は忘我の淵で躰を震わせている。
 三蔵の舌が胸元や首筋を這い回り、同時に悟浄の怒張で後ろを犯され、ときおり啄むようにくちづけられ、快楽のあまり視界を白く霞ませていた。
 卓球台に縛られたまま、紅潮した躰が艶めかしく仰け反る。
「……我慢できねぇ」
 三蔵は低く唸り、半開きになっている八戒の唇にくちづけた。
 もはや閉じることも忘れたような艶のある唇は、情欲にとりつかれた男の唇で塞がれた。強引に舌と舌を絡め合わせ、舌で吸いあうことを求められる。
 下肢は悟浄に、唇は三蔵に、上と下の粘膜を同時に二人の男に犯されたまま、性の極みへと追い詰められ八戒は身も世もなく悦がり狂った。
「っはぁッ……はぁッ」
 解かれた唇と唇の間に、透明な唾液が糸を引いき、娯楽室の照明を反射して光った。
 目元を薄いピンク色に染めて閉じ、首を横へ緩やかに振っている。悟浄は八戒の片側の脚を肩へとかつぐようにして、より深く貫きだした。
 びくびくと悟浄をのみこまされた細い腰と内股の筋が震える。切なげな声が八戒の唇から漏れた。
 わずかに残ったなけなしの理性でたよりない抵抗をしているとでもいうような風情だった。凄烈な精神は、男ふたりの好き勝手を許しはしていないのに、躰は蜜を垂らして貪欲に喘いでいる。
「ふぅ……ッ」
 唇を解放された八戒は、ゆっくりと瞳を開いた。その翡翠色の蠱惑的な瞳は、いまやいつもの冷静で清澄な色をひそめ、鮮やかな情欲の色に染まって潤んでいた。
「……ッ」
 その瞳を正面から覗き込むはめになって、三蔵が低く呻いた。ひどく扇情的だった。日頃品行方正なこの男が、いまや性にとりつかれ、肉欲に喘いでいる。その表情は艶めかしいことこの上なかった。
 落差は色香を生み、その狂暴な色香は三蔵を絡め取ろうとしていた。
「……クソ」
 ずくり、と下半身に熱い疼きが走り抜けて、集約してゆく。三蔵は思わず悪態を吐くと、八戒の手首を縛っている紐を解きだした。
 卓球台のネットの部分に通すようにして、八戒の躰をがんじがらめに縛っていたそれを急にほどいたので、繋がりあっていた八戒と悟浄はバランスを失った。
「! 」
「うぉ! 」
 力が抜けて、穿たれるままになっていた八戒が卓球台から落ちる。とっさに悟浄が支えようとするが、間に合わなかった。
「っつ……! 」
「っはぁッ」
 悟浄は、八戒をかばうようにして、後ろから床に倒れた。繋がったまま、もの凄い勢いで、床に崩れ落ちた。
「あ、ああ」
「痛て……」
 悟浄は眉をひそめながら、片手を自分の後頭部へと手を当てた。少々ぶつけたらしい。八戒の全体重を受け止めるかたちで、その下敷きになっていた。いつのまにか騎乗位になった。
「ったく乱暴だな! こんの、鬼畜ボーズ! 」
「うるせえ、さっさと代わらないからだ」
 三蔵は悪びれもせずに答えた。それどころか、八戒と繋がったままのエロ河童を邪魔そうな目つきで睨んだ。
「今ので、萎えなかったのか。しつこいヤツだ」
 悟浄はもう、三蔵の言葉には応えず、仰向けになったまま、自分の躰の上にいる八戒を見上げた。その腰へ手をやって撫でた。
「……大丈夫か、八戒」
「ふっ……」
 小刻みに八戒が躰を震わせている。凄艶なその表情は未だ変わりはない。悦楽で震えるたびに、まつげが小刻みに揺れる。
 悟浄は自分のそれが力を失っていないのに、ほっとした様子でゆっくりと八戒の腰を両手で支え、あげようとした。
「あぅ……」
 とたんに、躰の上で八戒が仰け反る。ゆっくり抜かれる感覚がよくてしょうがないのだ。綺麗な鎖骨やみぞおちの線がくっきりと快楽の汗で濡れて輝いているのが見える。
「……あれ、八戒ってば」
 悟浄が一瞬目を丸くした。
「……もう、イッちゃってたの? 」
 八戒を乗せた腹の上に、濡れた感触があった。指で掬ってみると、果たしてそれは白濁した体液だった。騎乗位になって、奥の奥まで悟浄ので突かれたとき、八戒は逐情してしまっていたのだ。
「……そんなに……ヨかった? 倒れたとき……奥まではいってヨかったんだ? 」
 淫猥に切れ長の目を細め、その大きな口を歪めて悟浄が囁く。
「スキモノだな。んなので感じるのか。てめぇは」
 イライラとした調子で、三蔵が傍らから口を出した。
「違……」
 八戒は首を激しく横へ振った。黒い艶やかな、少々快楽の汗を含んで重くなった髪が音を立てた。
「いじめんなよ。鬼畜ボーズが、八戒泣かせんなよ」
 悟浄が筋肉の均等についたしなやかな腕を伸ばした。そのまま、八戒の背に腕を回して、抱き寄せる。八戒は上体を倒す形で悟浄に下から抱きしめられた。もちろん、後孔は穿ったままだ。
「あ! 」
 微妙に突かれる角度が変わって、八戒が眉を寄せる。悟浄は、八戒の躰を下から腰を突き上げるようにして犯していた。
 びくびくと悟浄に突き上げられ、攻めを受けている尻肉が震えた。卑猥な眺めだった。
「……こーすっと、ソッチから丸見えじゃねぇ? 三ちゃん」
 にやりと悟浄が口を歪める。
「! 」
 悟浄の意図に気づいた八戒が、抱きしめられている腕をふりほどいて、背後を振り向こうとする。
しかし、当然そんな真似はさせないとばかりに、悟浄の力強い腕で羽交い締めにされた。



「温泉卓球(3)」に続く