三蔵×悟能(22)

「だめッだめぇッ……もうだめぇッ」
 こりこり、と可愛い感触を悟能の乳首は指に伝えてくる。くりくりとそこを弄っていた三蔵は心地よく悟能の悲鳴を聞いていた。
「あああああああああッ」
 悟能はもう一度、尻をふるわせた。また、白濁液を何度も吐き出した。三蔵の腹筋にかかり、下へと滴って落ちてゆく。身体にかかる湯に溶けてぬめった。
「イキすぎなんじゃねぇのか。てめぇ」
 唇の端をつりあげるようにして、三蔵は笑った。くっくっくっと愉しげに笑う。声は白いタイルに反響して響いた。
 感じやすい可愛い稚児。黒髪の美少年は快感で息も絶え絶えとなりながら三蔵に串挿しにされたままだ。
「ああッ……もうしわけ……ありませ……さんぞ……さま」
「すげぇ風呂がザーメンくせぇ。どうすんだ。てめぇのせいだな」
「ああ、おゆるし……くださ……い……もう……ああ」
 ぴくぴくと悟能の粘膜が、肉の環がわななく。稚児は三蔵に抱かれ続けて、すっかり過敏になっていた。開発され、男に抱かれ慣れた淫らな身体だった。中身はこんなに可愛らしく初心で可憐な少年のままなのに、身体は心を裏切って肉欲に膝を折り、淫蕩に喘いでいた。罪深いことだ。
 三蔵の与える快楽を全てひとつひとつ忠実にひろいあげてしまう。
 そんな身体を
「あんッああああッ」
 あえぐ少年を許さないとばかりに穿った。甘い糖蜜のように淫らな白い身体が許せない。悟能のふるえる乳首をそっと指先で撫でた。ぱくぱくと下の口が連動して収縮する。
「ああっああああっあああっ」
 あまいあまい悲鳴。
 三蔵はのけぞってそらされたその白い首筋に噛みついた。軽く白い歯を立てて甘く噛み、唇で吸い上げる。口吸いの跡が幾つも幾つも小さい花びらのように散ってゆく。
 そのまま片手は悟能の胸を這い、もう片手は悟能の屹立を扱くようにして上下に動かす。まだおとなよりは皮の多い裏筋を、丁寧にしかし容赦なく愛撫した。
「ああああッだめぇッだめぇ。もうイクまた……あああッ」
 喰われてしまいそうな情交だった。
 悟能はもう、何度目とも知らぬ白い液体を吐き出した。それは悟能をその腕から離さない金の髪の最高僧の身体にまたかかった。以前のものも流れ落ちきってはいない。べたべただ。
「……精液まみれにされるとはな」
 どろりとした精液を指ですくって三蔵が口元をゆがめた。
「も、申しわけありま……」
 あわてて、風呂桶を手にしようとしても、男に貫かれている身では手が届かない。湯煙が周囲に立ち込めている。
「さんぞ……さま」
 三蔵を洗うどころか、これでは汚している。
「悟能」
 みごとな金の髪が浴室の湯に濡れて輝く。うっかりすると見とれてしまうほど美しい。耳元へ舌を入れられ、甘くささやかれる。
「足りねぇ。もっと……」
 もっと抱きたい。聞かずともその先の言葉は分かっていた。確かにまだ三蔵は達していない。でも。
「おゆるし……くださ……い」
 悟能がひたすら許しを請う。いつも暗がりで抱かれていたのに、浴室では何もかも暴かれしまう。 ひどく明るかった。抱く三蔵には何もかもが丸見えだ。男だったら誰でも興奮するシチュエーションだ。
 恥ずかしい。いたたまれなかった。
「あうッ」
 三蔵は突然、悟能とつながったまま、立ち上がろうとした。
「いやぁッ」
 ずるッと抜けそうになる。感覚がひどく淫らで狂いそうになった。
 三蔵は悟能をかかえると、浴槽のふちへ腰掛けさせた。そして、そのまま
「ああっん……やぁ」
 悟能の片脚を大きく広げさせる。片脚を浴室のふちへとかけさせた。大股開きだ。恥ずかしい体位だ。なにもかも丸見えだ。
「さんぞ……さま」
 はぁはぁと荒い息を吐きながら、悟能があえぐ。その綺麗な目には透明な涙が滲んでいる。
「はずかしい……ぼく……」
 中腰で、浴槽に腰を預けた立位にさせられた。
「腕を俺の身体にまわせ。そうだ」
 三蔵の身体へ手を回して後ろで両手を組むようにさせようとするが、まだ幼いので、腕が回りきらない。
 油断すると指と指がほどけそうになる。
「大丈夫か。大丈夫だな」
 三蔵はささやくと、本格的に悟能を貪りはじめた。激しく抜き挿ししだした。
「あああッあああッ」
 がくがくと浴槽のふちにかけさせられた脚がふるえる。
「悟能……ごの」
 ぺろ、と三蔵の舌が悟能の胸を這う。胸のとがりを舐められて、悟能が痙攣する。
「あっあっ」
 腰を抱えて、ひきつけて深く埋めて……三蔵が射精した。
「くぅッ」
 悟能が悩ましげに眉根を寄せる。温かい体液が身体の内部に広がる。粘膜を潤おして淫らに滴った。
「あああッああああッ」
 腰をよじる。精液で汚される感覚が悦くて悦くてしかたがない。
「また、ガチガチに勃ってきてるな、てめぇ」
「ああ……」
「気持ちいいのか」
 ぺろりと悟能の唇を舌で舐めた。紅い少年の唇が濡れて光る。
「イイです。すごくきもちいいです……死んじゃう」
 悟能の瞳から涙が流れ落ちた。
「すげぇ敏感だな。いやらしい身体だな」
 そうしたのは自分のくせに、三蔵は美少年を責めるようにささやいた。その間も、稚児の股間に踊る屹立をもてあそぶのを止めない。
 達したばかりなので、そっと触れている。確かに、あまりきつく触るとくすぐったくなってしまうだろう。
「ふうッ……」
 ようやく、三蔵のが抜かれた。まだ硬度を失わないそれに未練たらしく肉の環が絡みついてひくついている。肉筒からぬるぬると白い三蔵の体液が滴った。
「風呂に入るか。一緒に入るぞ」
 ようやく三蔵様はそう言った。
「その前に身体を洗うか。お前のですげぇベッタベタだ」
「…………! 」
 悟能の顔が真っ赤になった。
 しかし、
 三蔵の身体を洗うのに、可愛い稚児はほとんど役に立たなかった。三蔵は湯桶すら自分で取った。確かに情事は長く続いていた。それは、犯された側が、はつらつと動き回れるような、生易しい性交ではなかった。
 喰われるような情交の犠牲となった悟能は、どちらかというと、必死になって崩れそうな自分の腰をなんとか自力で支え立っているだけで精一杯だった。

 浴槽のお湯をようやく止めた。檜の浴槽の縁が湯で濡れるたびに、清々しい香りが立つ。
「ん……」
 三蔵に後ろから抱っこされる形で湯に浸かった。
 身体を沈めると、湯があふれて浴槽から流れ落ち、水音を立てる。
「さんぞ……さま」
 腕の中の稚児は後ろ抱きにされたまま、三蔵にもたれかかっている。がっくりとしていて身体が支えられていない。感じすぎて身体がだるいのだ。
「僕、三蔵様のこと全然、洗ってません」
「仕方ねぇだろ」
 三蔵は後ろから、悟能の綺麗な襟足に音を立ててくちづけた。少年らしい清潔な生え際だ。
「また、今度洗ってくれればいい」
 三蔵様はささやいた。それは、また、こうやって恥ずかしいお風呂を一緒に入ることに他ならない。
 いや、三蔵様としては、もう毎回お風呂はこうやって入る気だろう。
「や……」
 悟能は後ろにいる三蔵を振り返った。
「何がやだ。俺とじゃいやか」
「恥ずかしい……です」
 美少年は小声で呟くと、目元に朱を刷いた。ぞくぞくするような、なまめかしい表情だった。どんな美女だってこんな初心な顔はできまい。
「……ッ」
 三蔵は息を呑んだ。三蔵の稚児は確かにもの凄い美貌だった。
「いや……さんぞ……さま」
 うわずった声を稚児は出した。
「なんだ」
「当たって……ます」
 悟能は後ろ抱きにされて、三蔵の腕の中にいた。悟能がみじろぎをすると湯面がゆらぎ、波が立った。
「やぁ……さんぞ……さまの」
 尻の狭間に硬いガチガチの怒張が触れていた。
「しかたねぇだろうが」
 三蔵は反省していない。こんな可愛い顔をする方が悪いと内心思っている。こんな顔しやがって、こんなお前の顔、見てて勃たねぇわけがないだろうがと思っている。
「お前が悪い。挿れるぞ。いいな」
「やだッやぁッ」
 湯面をばしゃばしゃと手で打って逃れようとしたが、大人の強い腕に、そうはさせないと押さえ込まれた。
 そのまま、先ほどからの行為でほころんだそこへ、オスの切っ先を突っ込まれる。
悟能が、その愁眉を寄せた。悩ましい表情になる。
「ああああッ」
 また、呑み込まされる。とろっと内部に放たれた、精液が歓迎するかのように、突き入れてきた三蔵のものへ淫らに絡み付く。
「……いい具合じゃねぇか」
 三蔵が眉根を寄せた。悟能の身体はひどく甘美だった。喰っても喰っても喰い尽せない。飲む傍から喉が渇く美酒のようだ。欲しくて欲しくてきりがなかった。
「……一回、出してから風呂の中でヤるとちょうどいいな」
「……! 」
 立て続けに行われる淫ら事に、身体も、心もついていけなくなった。少年は声にならない悲鳴をあげた。声変わりしつつある高い声が切れ切れに浴室に反響する。もう喘がされすぎて、声がかすれてきている。
「もう無理です……」
 さすがの三蔵様も、いたいけな稚児の懇願を聞いて、この間、寝込ませてしまったのをちらりと思い出した。
 湯当たりもしているかもしれない。
「じゃ、もう風呂は出るか……外で……またベッドでヤっても……いいな」
 首筋を舐め上げながら、淫らにささやく。三蔵はまだこの秘めごとをやめるつもりはないようだ。
「いやです。いやぁ」
「悟能……ごの……」
 三蔵に甘く名前を呼ばれて抱きしめられる。
「あっ……ああッ」
「いいって言え。もっと、お前が欲しい」
 湯に浸かったまま、後ろから、三蔵は抱く腕の力を強くした。肌が湯で濡れて、きらきら光る。
「足りねぇ。もっとお前が欲しい」
 真剣な声だった。聞いているだけで性的でぞくぞくしてくるような低音の声で口説かれる。なんどもなんども後ろからキスされて、稚児はとうとう首を縦に振った。
 もう、抱かれすぎて、腰から下の感覚がなかった。でも、たぶんベッドでまた入念に足の爪先まで舌を這わされて抱かれるのだろう。綿々と続く淫らごとに、理性が焼き切れ、身体は淫らに蕩けきっていた。

「さんぞ……さま」

 悟能が身体をかえして、三蔵へと向き合う。綺麗な金の髪は濡れて輝きを放ち、紫暗の瞳は悟能だけを見つめていた。紫の虹彩の中に、黒髪の少年の姿が映っている。
 三蔵の顔の輪郭は怖いほど整いきっていて、その端麗な線が青年らしい精悍な印象の首筋につながっている。裸の肩のあたりも筋肉が綺麗についていて、名工が刻んだ彫刻のように美しい。
「大好き……」
 稚児は突然、身体ごと最高僧に抱きついた。顔を真っ赤にしている。明るい浴室で抱かれるのははじめてだった。恥ずかしくてしょうがない。
 つながっているところすら、のぞきこまれて丸見えだ。喘ぐ表情も性器も何もかも全て見られてしまっている。三蔵がそれで興奮しているのは明らかだ。
 ……でも、恥ずかしいよりも三蔵のことが好きな気持ちの方が強かった。こんな恥ずかしい淫らな行為を相手に許してしまっていた。身体も許し、心も許し、何もかも許してしまっていた。生殺与奪の全てを三蔵に委ねきってしまっているのだ。
「……バカ、俺もだ。俺もお前が」
 三蔵も悟能のことが、愛おしくて可愛くて、もうどうしようもなかった。最高僧様は再び、腕の中の稚児をきつく抱きしめた。湯がふたりの間でひそやかに水音を立てた。
「悟能」
 三蔵に促されるままに、悟能は唇を深く重ね合わせた。優しく、しかしやや乱暴に悟能の頭を三蔵が撫でる。水分を含んで重くなった黒髪が、その下でバサバサと鳴った。可愛くて可愛くて、もうどうしていいか分からないのだろう。
 激情のままに大人の男の欲望をぶつけてそのしなやかな身体を食い尽くすようにして貪れば、この可憐な美少年はまた熱を出したり、腰を痛めたりしてしまうだろう。
 でも、この気持ちは止まらなかった。
「本当に俺はお前のことが――――」
 三蔵の言葉の語尾は深い夜に甘く溶けて消えた。


 




 


 エピローグ


 それから、何日か経った。

 ある晴れた日の午後、三蔵は人を避けるようにして庭にいた。
 どこからともなく、池から水音が聞こえてくる。とても静かだ。
「三蔵様、こちらにおられましたか」
 優しい声が三蔵を呼んだ――――声変わりしつつある少年の声だ。緑色の瞳をした美童が近寄ってくる。子供でもなければ、大人でもない。美少年特有の危うい魅力をふりまいている。すらりとした容姿だが、背はまだまだ三蔵より低かった。
「皆さん、三蔵様のことを探してますよ」
 みとれるほど綺麗に整った唇が言葉を紡いだ。
「そろそろ午後の法会のお時間です。お着替えを部屋にご用意しました」
 長めの前髪がまた美麗さを強調している。黒い髪はそれ自体が貴重な宝飾品のようにきらきらと艶を放ち美しい。この稚児中の稚児といった美貌の少年は、三蔵に向かって小首を傾げ、そっと傍に立った。香を焚き染めているのか、その着ている着物からかすかに甘く涼しい匂いがする。
 しかし、
「うるせぇ」
 最高僧様は不機嫌そうに口元からタバコの煙を吐いた。紫煙が庭木の緑の間へたなびき散ってゆく。
 その向こうには青々と苔むした岩が見え、その上に赤い紅葉が散りかかる、目にも鮮やかな景色が広がっている。
「あんな、かったるい行事になんざ、出ていられるか。ったく面倒くせぇ。俺は絶対行かねぇからな。――――そう伝えとけ」
 三蔵は振りかえりもせずに、庭の片隅にある池を見つめながら言った。
 静かな水面にはときどき、気まぐれに輪ができては消えてゆく。鯉が尾で水面を叩いているのだ。軽やかな水音が鮮やかに立った。
「分かったな、分かったなら、もう行け」
 金の糸でつくったかと見間違うほど綺麗な髪の間から、きつく光る紫暗の瞳がのぞく。
「俺は行かねぇ。面倒くさい」
 そんなつれない三蔵様の言葉に、美少年は思わず下を向いた。
「三蔵様を皆様のところへ連れていかないわけにはいきません」
 可憐な声が困ったようなくぐもった調子になってゆき、かすかに涙が混じった。それを聞いた三蔵の心にあっという間にさざなみが立つ。
「僕が叱られます」
 少年は最高僧の着物の袖へ指を絡めてせつなげに引いた。その秀麗な面は困ったように眉根が寄せられていて、煌めく緑の瞳はうっすらと涙で潤んでいる。
「……しょうがねぇな」
 その瞳に浮かぶ涙を見ながら、三蔵は諦めたように呟いた。悟能が叱られるときては、内心穏やかではない。稚児を抱えたから、修行や法会に身が入らぬのだと言われたくなくて、三蔵は以前よりも真面目に寺の行事に出ていたのだ。
「本当にくだらねぇ」
 三蔵の白皙の面に、苦虫を噛み潰したような表情が浮かぶ。
『僕が叱られます』
 この魔法の呪文を唱えれば、三蔵様はたいてい悟能の言うことをきいた。可愛い稚児が困ったように涙を浮かべてうつむけば、三蔵法師様はたいていイチコロだった。

 しかし、
「それじゃ、かわりに今夜」
 三蔵は悟能にささやいた。
「――――アレ、していいな」
 声がどこか淫らな調子を帯びる。
「そ、それは」
 涙を浮かべたまま、悟能は困惑した。
「お前がいやだっていうから、しないでいたが、アレ使って抱いてもいいな」
「う……」
 たいていおとなしく三蔵のいいなりになって抱かれている悟能だったが、まだ初心で、できなかったり、恥ずかしすぎてダメだったりする性技がいくつかあった。
 たいてい、悟能が涙を浮かべて 『無理です』 と閨で泣きつけば、三蔵はあきらめたが、今日はイヤな法会に悟能の頼みで出るのだから、少しは譲ってもらいたいと思ったようだ。
「悟能」
「あ……」
 鏡の前での後背位、ローションプレイ、青姦、玩具を挿れられたまま口淫を受けること、上に乗せられてのシックスナイン、自分が主体的に動いて行う騎乗位、鏡の前での立ちバック……。
 
 どれも、まだ恥ずかしくって無理だった。

 悟能は三蔵に抱きしめられた。最高僧は悟能のすらりとした痩躯をきつく腕で包み込んだ。
「返事は」
 そのまま優しく、くちづけられる。
「……夜」
 悟能の声はふるえている。柳のごとく細い腰を三蔵の手でゆっくりと撫でられた。
「ご用意して……お待ちしてます」
唇をふるわせて返事をする。艶かしい声だ。
「分かった」
 抱きしめたまま、最愛の稚児の返事を聞いて、三蔵は口元にひとの悪い笑みを浮かべた。

 法会に出ないと言っていたはずの 高僧 「三蔵法師様」 は一気に機嫌が直り、
「大講堂へ行く。方丈に戻って着替えるぞ」
 迎えに来た稚児へさすが、神仏もかくやといった威厳のある口調で言った。
「――――これでいいか」
 ちら、と稚児の方を振り返る。
「はいっ」
 悟能はぱぁっと花が咲いたように笑った。
 




 三蔵は悟能に手伝わせて、正式な三蔵法師の金冠、頭巾、白衣、金襴の袈裟を身に着けた。うっとりするほど麗しい。相変わらず綺羅々しいほどの美僧ぶりだ。天の彼方に住まうとかいう天人のようだ。
そんな三蔵をじっと見つめていた悟能だったが、
「三蔵様」
 突然背後から抱きついた。
「なんだ」
 内心、三蔵は照れているようだが、声や表情になど出さない。
「すいません。イヤな行事なのに」
 ぎゅ、っと悟能は抱きついた腕の力を強くした。三蔵のまとっている金襴の袈裟が指に当たる。金糸銀糸で縫い取りされた華麗な絹糸の感触が冷たい。
「……てめぇに泣かれるとどうしようもねぇ」
 三蔵は胸のあたりに回された、悟能の手に自分の手をそっと優しく重ねた。なだめるように少年の手を撫でている。
「……大好き」
 悟能は三蔵の背に顔を寄せ、よりいっそうすがりついた。耳まで真っ赤にしてかわいい告白をする。
「……バカ……俺もだ」
 ちょうど、悟能に会って2年ほどが経とうとしていた。
「ずっとずっと、これから先もずっと一緒だ……悟能」
 


 了