共同飲食(2)

「そうだ、上手い、ソコ、ひろげて指入れろ」
「…………! 」
 地獄だった。
 壁ぎわに、三蔵が座り、八戒の上体を抱えるようにして背後から抱きしめている。忠実な弟子の悟空は、八戒のしどけない脚を広げてのぞき込んでいた。
 男ふたりがかりで犯されていた。八戒はひたすら自分の運命が呪わしかった。とろとろと、狭間から悟浄の放った精液が漏れる。
「すげぇ量だな。ふざけんな、バ河童」
 三蔵があげつらう。
「そっちこそ、邪魔してんじゃねぇよ」
 悟浄は、もう静観するしかないと決めたらしい。こちらは休憩とばかりに、手にしたライターでハイライトに火をつけた。
「てめぇこそ、抜け駆けしてんじゃねぇよ」
 金の髪をした男はとことん不機嫌だった。この精液の量。何時間も陵辱されないとこうはなるまい。
「おーや? やっぱり妬いてるんだ。三蔵サマってば」
「バカ言え」
 輪姦とは、同じ器で酒をまわし飲むような行為だ。汚れに汚れて相手と自分の境目も分からなくなるような。
 三蔵は八戒のしなやかな両脚を腕で抱えた。悟空の眼に良く見えるように広げる。
「もういい。バ河童がさんざん突っこんだから、もう慣らす必要もねぇ。ガバガバだ」
「…………! 」
 八戒が目元に涙をにじませる。屈辱だった。
「挿れろ、悟空。早くしろ」
 この美しい黒髪の男に行う淫虐は、段々と度を越していた。悟空はゆっくりと身体を進めた。その屹立きつりつは、もうとうに張り詰め、痛いほどに勃起していた。
「ごめん。八戒。俺」
 心持ち、つぼんだ肉のに、硬いモノをあてがう。
「俺、八戒のこと」
 少年は熱っぽい目つきで八戒をひたすら見つめている。
「あああッ」
 悟空の怒張どちょうが、環をくぐって挿入された。肉筒いっぱいにきちきちに埋められる。八戒の額に脂汗あぶらあせが浮いた。陵辱刑のような行為だ。
「ひッ」
 三蔵が、抱えていた八戒のちょうど目の前に近い首筋に舌を走らせた。
「……! ううッ」
「動け、悟空」
 三蔵が命令する。
「腰を引いてみろ。ソレを軸にして尻をまわすようにしろ」
「……! やめて……! 」
 八戒が喘いだ。本当に悟空は一度腰を引いて抜きかかった。ぐぷ、と空気を含む淫らな音が立つ。
「くぅッ……」
 次の瞬間、師匠の指導のとおりに打ちこんでくる。八戒は身も世もなく喘いだ。よがり狂うしかなかった。
「ああああッ」
「悟空、抜くときがイイそうだ。もう一回ヤれ」
「やめ……」
 悟空の硬いものが粘膜を後退するように引かれると、惑乱するような甘美な感覚が腰の奥からき上がってきた。
「ひぃッ」
「八戒ッ……八戒ッ」
 悟空はつい夢中になった。我慢できなくなった。ひたすら尻を振りたてる。
「ああッああああッもうダメッ」
 悟空は八戒の両脚を肩へかつぎあげ、それこそ、腰をめちゃめちゃに本能のまま振って、突っこんだ。
「ひッ……」
 ふく、と悟空のモノがふくれる感覚がする。脈打つ血管を粘膜で感じる。
「あああッ」
 悟空の怒張が、ナカで弾けた。暴発に近かった。太くて硬いモノが、粘膜の壁にこすりつけられまくる。
「ひいッ」
 八戒は喘いだ。本当にこれは犯されている。悟空の好きなように陵辱され、抱かれていた。あの、幼さを残した、少年のようで純粋な、大好きで大切な悟空に娼婦のように肉体を犯されている。
 悪夢だ。
「早ええ」
 三蔵が呟いた。
「早すぎる。そんなんじゃ、コイツは満足しねぇぞ」
 まだ、初心な悟空に、師匠はきついことを言った。
「だって」
 悟空が顔を真っ赤にして呟く。こんなしどけない八戒を前に我慢しろというのが無理だった。
「ま、てめぇのせいじゃねぇ。コイツがエロすぎるのが悪い」
 三蔵は、八戒の唇にその長い優雅な指を走らせた。綺麗だが、銃を使い慣れた節の立った指だ。そのまま、八戒の口へ指を挿しいれる。舌を人差し指でもてあそんだ。
「てめぇがエロ過ぎるから、もたないそうだぞ。このドスケベが反省しろ」
 背後から、カフスのはまった耳元にささやく。
「う……」
 八戒の額に玉のような汗が浮いた。肌がわなないた。
「もたねぇ時は、どうするか知ってるか」
 三蔵が悟空へ言った。
「え……」
「ひっくり返せ。後ろからヤれ」
「ひッ……! 」
 三蔵は八戒の上体をひねるようにして、自分の上でうつぶせにさせた。尻が高く悟空の前にかかげさせられる体位だ。上体は鬼畜坊主に、白い尻は悟空の眼前にさらされる。
「イキそうになったら、体位を変えろ。少しはもつ」
 三蔵の長い指が、かかえていた尻たぼを割って後ろのあな穿うがつ。八戒が悲鳴を上げた。
「ココに突っ込め。もっともっと欲しいって言ってるぞ」
「やめ……もうやめて」
 八戒が悲鳴を上げる、しかし、とろとろとした粘性の白い体液が尻からつらつらとしたたり落ちた。淫靡いんびな眺めだ。
「こい、悟空」
「あああッ」
 三蔵の養い子は忠実だった。八戒の背にのしかかり、その白い尻を犯す。
「はああッああッ」
「……イイみたいじゃねぇか。後背位の方がスキか」
「ああッああ」
 もう、八戒は言葉もしゃべれない。ずぼ、ずぼと悟空の怒張が、八戒の粘膜をめくりあげて抜き挿しされる。悟空が出入りするたび、石榴ざくろ色をした粘膜が、体液に濡れて光る。
「ひッ……ッ」
「……そんなにイイのか」
 三蔵の眼が淫猥いんわいに細められる。
 三蔵は、とうとう自分のベルトのバックルを外した。今まで散々、八戒の痴態を見つめ続けて、そこは痛いほど張り詰めていた。
「う……!」
「入るだろ、ド淫乱」
 三蔵は嗜虐的しぎゃくてきに吐き捨てた。悟空が貫いているその肉の環近くを自分の硬い性器でつつく。
「ああッ」
 八戒は目をいた。悟空のが抜けた次の瞬間、三蔵のが下から入ってきた。じゅぶじゅぶと大量に放たれた精液をき分けて、硬い性器に貫かれる。
「ああッああああッ」
 目をむいて、黒髪の麗人はわめいた、腰が震える。淫ら過ぎる感覚だった。背筋がとろけてぐずぐずに溶けそうだ。腰をぐりぐりと三蔵の腕で押さえつけられ、下からきつく深く犯される。
 悟空と三蔵は、交互に八戒を穿った。お互いの亀頭が白い白濁液をつけて糸を引いている。
「イヤッああああああッ無理ッイヤああああ」
 悟空のが抜けると、すかさず三蔵に貫かれる。いやらし過ぎる行為だった。男ふたりに代わる代わる、同時に陵辱され、もてあそばれている。
「今、入ってんのは俺か、悟空かどっちだ」
「あああッ」
「答えられねぇのか。死ぬまでヤってやる」
「あああッあッ」
 ずちゅ、と三蔵の怒張に肉筒を陵辱される。粘膜がわななき、弛緩しかんし、喘いでのたうつ。ぴくッと内部で血管のうごめく気配がする。耐え切れず、八戒が鼻にかかった甘い喘ぎを漏らした。
「こっちが悟空だ」
 ずるッと抜ける。白い精液が肉の環から滴る。卑猥だ。
「それで、こっちが……」
 硬くて、長くて脈打つ肉棒に穿たれる。
「……俺のだ。覚えろ」
 目の前の黒髪の男にくちづける。悟空の怒張がちょうど繋がっている尻の狭間はざまの上に載せられ、すりつけられる。くぷ、と吐き出しきっていない精液が、その鈴の口のような場所からとろとろと漏れた。尻肉の間を白い体液がこびりつき汚していく。
「ああッああああああッダメッああああ」
 もう、獣と化した八戒が喘ぎ叫ぶ。耐えられない。酷い淫虐だった。言われなくても自分で尻をまわしてしまう。言葉にならない言葉をわめき、尻をふってよがり狂った。
「ひッ……?」
 くちゅ、くちゅと三蔵は八戒と舌をからめあわせて上の口を犯した。蕩けるようなくちづけだ。悟空が背後から八戒の綺麗についた背筋になだめるように舌を走らせてきた。
 そしてそのまま、
「ああああああああああッああああッ無理ッ無理でッ」
 悟空の怒張と三蔵の肉棒、それは同時に八戒を穿っていた。
「ひッ―――――」
 八戒が綺麗な緑の瞳を見開く。びちびちに後ろがひろげられる。
「ああああああああああああああああああああッダメぇえッ」
 オスの性器がふたつ、自分の内部でぶつかりあう感覚がする。淫ら過ぎる感覚に、八戒はおかしくなった。背をわななかせて、三蔵に求められるまま卑猥な言葉を唇にのせる。
「裂けちゃう……裂けちゃ」
 わななく唇はもう、正気を失っていない。八戒は強烈な後ろの感覚で前を弾けさせていた。身体がぶるぶると震えている。
「裂けてなんざねぇだろうが、このガバガバが。カマトトぶりやがって。イクほどよかったのか。でも、 まだまだ、男ふたりじゃ、足りねェってココが言ってんじゃねぇのか」
 三蔵が淫らな相手を責める。
「犯して欲しいって言え、もっと犯して欲しいって正直にな」
 もう、八戒も脳がまともに動いていない。銀色の快楽の粒子がひたすら白い脳内を舞い、もう人でないケダモノの肉欲におぼれきっている。
「ああッ、犯して、抱いて……ぐちゃぐちゃにして……くださ……」
整った顔立ちを歪めて、八戒はうめいた。吐息まみれの甘い声だ。
「犯して欲しい孔はココか」
「ああ、もっと……」
 八戒は自分から、三蔵と悟空を受け入れている孔を綺麗な長い指で拡げた。熱っぽく、狭くて……淫らだった。
「もっと……もっとああああ」
 骨まで溶けそうな快楽だった。
「淫売が。悟空に言うことはねぇのか」
「ごくッごくうッ……あああ」
 八戒は身も心も崩れ落ちた。快楽という名の白い闇に精神も脳も喰われきった。





「悟空、お前にとって、八戒はどんな存在だった」
 慶雲院の最高僧が服をととのえながら、静かに養い子に聞いた。傍らの黒髪の男は肉欲に屈して気を失っている。
「先生、みたいな、お兄さんみたいな……八戒って優しいじゃん。俺、この緑の眼、すっごく綺麗だって、ずっとずっと思ってたし」
 悟空は赤い顔をしてうつむいていた。小さな声で呟いている。いつの間にか、傍で悟浄も黙って聞いていた。
 悟空にとって八戒とは、兄のような、先生のような、親のような存在だった。一時期、慶雲院に毎日来た。保護観察処分だからとはいえ、うれしかったのだ。
『悟空。ここにミカンが、2個ありますね。これにさらに2個加えると幾つでしょう? 』
 家庭教師のような、優しい保父さんみたいな……そんな存在だった。とにかく、大好きだったのだ。
「ふ……」
 気を失った八戒の後孔から、どろりどろりと白濁液がしたたり漏れてゆく。
 真面目で清潔な、眼鏡をかけた好青年。
 しかし、もう、ここにはそんな存在はいない。ここにいるのは、男を欲しがって身悶みもだえしている淫猥な肉のかたまりだ。
 ショックだった。男達に輪姦されつくして、八戒はすっかり変わり果ててしまったのだ。無残だった。
「でも、八戒のこと、大切だよね。だって、俺ら仲間じゃん」
 しかし、悟空はきっぱりと言った。言ってのけた。まっすぐな金色の視線が、三蔵へるように打ちこまれる。乱した服は、いつの間にか、シャツをきちんと着こんでいた。
「そうだろ、三蔵だって」
 悟空は言った。口調に、ほのかに薄く愛がひそんでいる。
「……ああ」
 三蔵は返事をした。こんなに正面から問われれば、正直に答えるしかなかった。自分と、悟浄と、悟空は、確かに八戒という名の同じ釜の飯を喰っている。――――仲間だった。 酒を同じ盃で、まわし飲んでいる。貴い儀礼のように神聖な儀式のように。みんなでだ。
「抜け駆けすんなよな。サル」
 傍らにいた悟浄が呟いた。先ほど拾ったらしく、八戒の眼鏡を手にしている。
「そう――――コイツは、お前の言うとおり、みんなのモンだからよ」 
 そう言って、床に倒れたまま、気を失っている美人の顔へ、眼鏡をそっとかけた。



 了