蝶々(2)



 ご注意!
 こちらの話は爺×八戒の後編です!
 オリジナルキャラが出てきます。苦手な方はご注意下さい。

 書いてる本人はこの 「ヤッてるだけエロ」 をノリノリで書いてますが(死)
 嫌いな方はご覧にならないことをおすすめします。
 すみません。

 怖いものみたさの方はどうぞ↓



「やっ……やぁ……」
 体内の奥深くから、ずるりと男のものが抜かれる粘質な喪失感があり、八戒は躰を震わせた。
「やぁ……ぬ……抜か……」
「『抜かないで』? 」
 喉で楽しげに初老の男が笑う。
 思いきり、突っ込んで、来て欲しいのに、かえって抜かれてしまった。
 精神とは別の、八戒の淫らな欲望が、喪失感に身悶える。
 突っ込んでぐちゃぐちゃにして……。そう言って泣けたらどんなにいいだろう。
 男に犯される味を覚えた躰はより淫らな快楽を望んで震えている。
 甘い媚態で、後ろの孔を自らの指でひらき、揺するようにして客にねだる。
 発情しきった目つきが妖しい。声に出さない誘惑はいっそ官能的だ。
 目に毒な誘惑を無意識にやってのける美しい淫売めいた八戒の仕草に百戦錬磨の客は苦笑した。こいつの淫乱さは天性のものだ……と。
「可愛いねぇ。ほんとにお前さんは可愛いよ」
 客の性器を抜かれた躰を震わせていると、音を立てて鎖骨の辺りに口付けられる。
 まるで喰われるような、獣の愛咬のような行為。噛み付くような口づけは、唇にも降り、角度を変えて何度もお互いの口中を貪りあう。
 年齢にそぐわぬ客の激しい淫らな口づけに八戒は頭の後ろが鈍く痺れていくのを感じていた。
「あっ……あ……」
 喰われるような口づけを加えられながら、客の手によって、尖って震えている桜色の乳首を摘まみあげられる。
 きつく唇を貪り喰われたまま、八戒は唇の重なり合う僅かな隙間から声を漏らした。
 両手で、暫く客は八戒の胸の甘やかで淫らな飾りを弄んで楽しんでいたが、そのうち片手を八戒の立ち上がっている性器に伸ばした。
「くぅ……ん」
 客に触れられ、たちまちのうちに更に硬度を増す自分が恥ずかしくてたまらない。
 物慣れた愛技。指で輪を作るとそのまま八戒のペニスを扱き上げる。其の時も、片手は乳首を摘まんで潰すような愛撫を施し、舌で八戒の綺麗な歯列をなぞり上げた。同時に三点の感じる弱い所を責められて、八戒の躰がびくびくと跳ねる。
「ああ……っ! 」
 オーソドックスな基本の愛撫も、同時に幾つも与えられると躰を酔わす危険な美酒になる。
 しかも、経験豊かな客は同時に施しているのに、そのどれも基本に忠実で手抜きがなかった。
 もしこの道に教本があれば、今夜の客の愛撫は間違いなく手本に数えられるだろう。
 長年の経験から熟成された性技に八戒は淫らに狂わされ、陸に上がった若魚のようにひくひくと跳ねた。
 しかも、その間ずっと唇も犯され、貪られているため、息が苦しい。喘いで耐えることもできず、口づけられている八戒の眦からは、銀の雫のような涙が伝って落ちた。
「は……ぁあぁ……ぁん」
 甘い吐息を貪る相手の口の中へと漏らして八戒の躰が魚のように跳ねる。
 力と体重をかけて客が逃がさぬとばかりに抑えこむが、ふとした隙に口づけが外れ、八戒からはしたないほど甘く蕩けきった喘ぎ声が漏れた。
 自分でも、耳を塞いでしまいたくなるような卑猥な音色に羞恥から八戒の躰が朱に染まる。
聞く男の理性や精神を甘く狂わせる啼き声だ。
「可愛いやつめ」
 陶然とした八戒の表情を眺めながら客が呟く。
「男殺しってのはお前さんみたいなのを言うんだろうな。清廉で清雅な外見の裏ッかわにこんな助平でイヤラシイ本性を隠していたりしてよ」
「ああ……んっ……く……う……んん」
「もうよ、その落差になんて言うのか、男は参っちまうんだろうな。たまらねぇよ」
「は……ぁん……やぁ……」
「抱いて、こんな想像もつかねぇ艶めかしいお前さんを知っているのは……俺だけだってな、他の奴は想像もできねぇだろうってのは……すごいそそるよ……ぞくぞくする」
「やぁ……や……ん……やぁ……っああぁっ」
「俺だけのものにしちまいたい……俺だけのものに」
 うわごとのような甘い睦言を囁かれながら躰中を親子よりも年の離れた男に可愛がられる。
 ある種の倒錯した感覚。淫らといえば、これほど淫らな情景もないだろう。
 淫靡な情交を続けながら、八戒は躰が疼いてたまらなかった。
 男の唇が胸元に落ち、舌で乳首を舐りあげるようにされ、八戒の躰がびくびくと跳ねた。
 もう、もっと欲しい。
 もっと、もっと躰の……奥まで……。
 甘い、甘い淫らごとを声に出してねだりたくなる。
 八戒の目つきは発情しきって男を流し見るような目つきになり、目元を朱に染めて艶めかしい。
 相手の男もこれほど経験豊富で世故に長け、世慣れた男なので、八戒の求めが分からぬはずはない。声に出さずとも八戒の目つきが誘っている、求めている、ねだっている・・。抜かないで、あのまま可愛がって、抱いていて欲しかった。
 何よりも雄弁に八戒が目で語りかけているのに遊びなれた男が気づかぬわけがない。
 わざと焦らし、もっと八戒が甘く熟れるのを男は待っている。
 焦れて焦れてしょうがない八戒は、躰の奥のうねるような疼きに耐え切れず、男の耳元に縋りついた。
「お願いです……僕に……もっと……」
 八戒は目元を色っぽく染めて囁くが、これ以上続けられない。
 忘我の快楽が寸止めにされ、これ以上恥ずかしい言葉を言うにはまだ微かな理性が邪魔なのだ。
「何を 『もっと』 だ。ん? 」
 何を八戒が欲しいのかなんて、百も承知な癖に、客は聞きたいし、見たいのだ。こんな清潔そうな八戒が、情欲の虜になったまま、淫らごとをその端麗な口端に乗せる有様を。
「言わねぇとこのままずっとやらねぇぞ」
 甘い調子で残酷な言葉を耳元に囁きこまれ、恨みがましい凄艶な目つきで八戒は相手を見やった。
「も……言わなくてもっ……っご存知でしょう……僕が」
「言わないと分かんねぇよ 」
「あぁうっ……あっあっそんなっ……ぅ……くっ……ふっ」
 生殺しのように敏感な首筋を舐められる。
「あっあっ……お願い……もう」
「言え、はっきり……ほら……」
 男は性器の卑猥な俗称を用いた言葉を八戒の耳元に囁き、言ってみろと八戒に命ずるが、八戒は言えないというように目元を羞恥に染めながら首を横にふる。
 いやいやをするような可憐な様子に、相手の男はとって喰ってしまいたいような狂暴な衝動に襲われる。
 それに耐えながら、八戒の可憐な有様にそそられるように勃ちあがったそれを、八戒の股に押し当て、ぴたぴたと叩いた。
「俺の何が欲しい」
 情欲のために潤んだ瞳を瞬かせながら、八戒は男を恨めしそうに見る。
 もう、耐え切れない。股に押し当てられたそれで、思いっきり貫いて、躰の奥の疼きも何もかも埋め尽くして欲しい・・・。
 我慢しきれず、張り詰めている八戒の前に手を伸ばすと、客が自分の怒張ごと握りこむ。ふたつの性器が、先走りの液に塗れてぬちゃぬちゃと卑猥な音を撒き散らしながら、局部に快感を伝えてくる。
 八戒は躰を戦慄かせながら、もう、限界だというように、小声で、おねだりを囁くように告げた。
「聞こえねぇ。そんな声じゃやらねぇぞ」
「あ……ひど……酷い……」
「もっとでかい声出せるだろうが。な、喘ぎ声は・・結構響くくらい出んだからよ」
 虐げるよな揶揄に、八戒はいたたまれないような気分になる。言葉でも嬲られて、八戒は身の置き場がない気分にさせられる。
 羞恥に身悶えしながら、男の耳元にぴったりと口をつけるようにして囁く。まるで、囁いている自分自身にも自分の声が聞こえなければいいと願うように言葉を舌に乗せる。
「お客さんの……×××を……僕の×××に下さい……お願い……挿れて……。奥まで……ぐちゃぐちゃにして……下さい……あ……っん」
 客は、八戒を耳元から引き剥がして、顔を見ようとする。
 羞恥で居たたまれない八戒は顔を手で覆おうとするが許されず、美しい顔を剥き出しにされる。
 この端正な顔立ちから、今の淫らな言葉が発せられたのが信じられぬというように、客は八戒に言った。
「俺に 「下さい」 ってのはどんなふうにだ」
 耐えられるのはそこまでだった。
「お客さんの×××を、僕の×××のナカに……挿れてかきまぜて……めちゃくちゃにしてっ……ずぼずぼ出したり挿れたりして……。僕のとろとろになってる淫らな孔に突っ込んで……それで最後は僕のナカでイッて……。お願い……もうっ……本当にお願い……ああっ」
 下品なことなど考えたこともございませんと言うような上品な容姿を裏切る卑猥な言葉を囁く八戒を前に、言わせた客も完全に火が着いたらしい。
 乱暴に抱き寄せるとそのまま忙しない手つきで八戒を押し倒し、組み敷いた。
「ああっ……ああ……っ……あっあっ……」
 尻肉を左右に開かされ、そこに男の赤黒い性器を捩じ入れられる。
 全てを快楽に変換させられるほど、焦らされた躰は、淫らに歓喜に震えて男のものを咥えこんでいった。
 甘い、甘い嬌声。八戒の快楽を、性的な興奮を余すことなく伝えて正直に部屋中に響いた。
「いやらしい奴だ……ほれ、望みどおり、ずぼずぼ出したり挿れたりしてるぞ……どうだ? 」
「あっあっ、いいっあんっ、イイッ……」
 ぐちゃっ、ぐちゅっと激しすぎて空気を含んで漏れる淫猥な濡れ音に、羞恥と目くるめくような甘い性的な快感を感じる。
 八戒は悦がって男の背にそのしなやかな手足を回して啜り泣き、喘いだ。
 既にプライドも粉々になるほどに、男に焦らされ、欲しがらされて、今の八戒にとっては、自分の内部に出入りし、敏感な場所を擦り上げる客の性器の感覚が全てだった。
 もう、自分が男だという矜持も何もない。あるのは快楽に支配される感覚だけだ。
 喘ぎ続けて閉じられることを忘れたような八戒の口の端から、一筋、唾液が首にかけて伝う。
 強烈な快感からか、目元からは涙がこぼれ、どこもかしこもこれ以上ないほど乱されていた。
 下肢をこれ以上ないほど開かされて太い怒張を捩じ込まれ、乳首をちゅっちゅっと吸われる。
 そのたびにびくびくと繊細な躰をひくつかせ、耐え切れないほどに犯され続けて八戒の理性が焼ききれた。
「あっ……もう許して、もうっもうっ……ちんちん抜いて……ああっ。も、駄目ぇ」
「抜いてほしいのか? 嘘つけ。こんなに締め付けて悦びまくってるくせに、このド淫乱が」
「やっ、ちが……違う……許して……許してぇっ……」
「 『ちんちんが気持ちよくてたまりません』 って正直に言ってみろ。ほら、こんなにきゅうきゅうに締め付けてきやがって……凄い上手だよ。スケベな躰してるな。こんな綺麗な顔してるくせによ。このドスケベが。これじゃ、男が欲しくて欲しくてしょうがないだろうが」
 ぐぷ、ぐじゅ。ぐちゅぐちゅ……。

 腰を揺すられ、貫かれ、忘我の淵まで連れ去られる。
 達してしまう、許してと縋る八戒を客は突き放して、快楽の淵へと叩き込んだ。
「ああっ……! 」
 細く長い悲鳴のような逐情の声をあげて八戒はふたたび達した。ほのかな羞恥と屈辱からか、八戒は客から顔を背けて達した躰を震わせた。
 八戒の胸元まで飛び散った精液を拭うこともせず客は八戒の腰を抱え込んで犯し続ける。
「やっぱり俺のちんちんが気持ちよくてイッちまったんだろう? 」
 卑猥な口調で言われて答えられない。敏感な躰を淫乱な雌犬のように男に絡ませていることしかできない。
 客は答えられない八戒を見下ろして声に出さずに笑い、躰に飛び散った八戒の精液を指で拭って掻き集めると、そのまま、まるで甘露でできたクリームのように八戒と獣のように繋がっている箇所へともっていった。
 客は一度、勢いよく抜き出すと、八戒の溢した精液を八戒の後孔に塗り、自分のモノで円を描いて周囲に塗りこめるようにしながら再び突き入れた。
 己の溢した淫らな粘液のせいで、客に貫かれている潤滑が良くなり、八戒を再び惑乱するような快楽へと誘った。
「ああ……っ! あ! あぁっ……」
「どうだ? 自分の味は。ほれ、俺の先走りと混じってお前の中でかき回されてるぞ。気持ちいいか? 」
 余りに淫蕩な目くるめく行為の連続に、骨まで蕩けていきそうだ。感じすぎて喉も枯れるほどに喘がされ、何もかも剥ぎ取られて肉体はもとより、精神も裸にされて、八戒はしどけなく客に許しを求め続けることしかできなかった。
……これ以上は許して。これ以上はもう抱かないで……。これ以上抱かれれば……。
 これ以上抱かれれば、もう正気になど戻らないのではないか。
 桃色のおぞましく下品な見世物小屋で、いやらしくも裸のまま首輪、脚輪を嵌められて、飼われるような、性的な動物になってしまって自分には理性など戻ってこないのではないか。
 そして不特定多数の男達に喜んでその淫らな尻を差し出して……。
「ああっ……! 」
 淫らがましい想念が、快楽で発光する脳髄の隅をよぎった。
「何を考えている。俺に突っ込まれながら、他の男のことでも考えていたか? 許さねぇぞ」
 お仕置きだとでも言うように、きつい突き上げが始まった。男に抱かれる最後の責めがはじまり、八戒は快楽にその端正な顔を歪めて耐えた。
 いかに優しくゆったりと抱く男でも、この最後の獣に還る瞬間だけは同じだ。どんなに年を経ても変わらない。抱き潰す勢いで、強引に己の快楽を追って激しく突き上げてくる。
「もういいか? もうお前は達して満足しきったか? 俺はもうすぐイッちまいそうなんだけれど」
「も、もうこれ以上されたら躰が……もちません……」
「随分と可愛いこというんだな? んなこと言われるとよ、もう少し可愛がってやろうかと思っちまうんだが……」
 客は八戒の耳たぶを舐め上げながら腰をつかって追い詰める。八戒は目に涙を滲ませて懇願する。
「あっあっ……もうっ……ゆるして……くださ……」
「分かった。もう、いくぞ……ほれ……」
 客が低く立て続けに呻いて八戒の細腰を強く引き寄せた。途端、温く、生暖かい沁みこむような淫らな液体が、何度かに分けてぴゅ、ぴゅっと躰の奥底に放たれる。
 敏感な内壁に擦りつけられて八戒は獣のように腰をくねらせて痙攣し、呻いていたが、そのまま男の腕のなかで意識を失った。



 気がつけば、饐えたような安宿の中、だった。
 客は八戒に夢中で自分がどこにいたのかさえも忘れ去っていた。
 初老の客はあまりこうした場所には馴染みはない。
 薄汚い寝台で、八戒の周囲だけが、うす柔らかく高貴に発光しているように見えた。
 八戒の額に汗で張り付いた艶やかな髪をかきあげてやる。
 八戒は達して気を遣り過ぎて意識を失っているようだ。
 散々男に貪られた躰を横たえて、艶めかしくも息も絶え絶えという有様だった。
 そんな八戒の様子をみて改めて客はある種の感慨にふけった。

 こんな気持ちは久しぶりだ。

 実際のところ、ここまでこんなに若い男娼を貪れた自分に驚いていた。
 初老の客は性的なことに対する自信を失いかけてもいた。
 食が細くなってゆくのに比例するかのように、性欲も減退して行くのを年とともに自覚せざるを得ない。
 最近では、どんなに美しい女を見ても、食指というものが動かない。
 実際、どのような美女すら見飽きたと、その一瞥で興味を失うような、恵まれた権力ある老人達が、いつの時代でも社会の上層を占めているものだ。この男もそうした一人だった。
 しかし、そんな恵まれた立場を、彼が楽しんでいるかどうかは別の話である。
 実際、最近何にも夢中になれない自分というものに、初老の客は内心虚しさを抱いていた。
 ちょうど、若い男が女性の下着の線や取るに足らぬ卑猥な写真で性的な快楽を貪るのを、中年の男が侮蔑とともに羨望の視線を送るのに似ている。
 もはや、若い頃夢中になり、追うことができた快楽は遠いものだ。青年の頃は容易く興奮し、性的な喜悦に容易く到達できたというのに、どんなモノでも手に入る権力と金を得た今、肝心の自分の性的なポテンシャルと体力が磨耗し、使い物にならなくなっていることに取り返しのつかぬ焦りを感じている。
 しかし、と初老の客は八戒を愛しげに眺めながら思った。
『この美しい若者は思いもよらぬ回春剤かもしれぬ』
 若返りの薬のように八戒の下肢を舐め、甘露のようなその若いエキスを吸い、その若い肌をあますことなく味わって……。
 この年になってこれほどの喜悦と充実感を与えてくれようとは。
 少なくとも、八戒を抱いていたひとときは己の年を完全に忘れ去っていた。昔の雄そのものだった自分というものを完全に取り戻せた気すらした。
 それもこれも、媚薬のように端麗で淫らな八戒のせいだった。端正で、知的な八戒が、理性を剥ぎ取り、抱くとこんなに淫らになることに驚きを隠せない。
 人は抱いてみないと分からないというが、淫蕩に見せて、実は見掛け倒しでベッドで大人しいのよりも、八戒のように、セックスなどしたこともありませんといった真面目な外見で、実は自分でも躰を持て余すほど淫乱だというのが、一番興奮する。
 しかも時折、男に抱かれるのは不本意だとでもいいたげな目の光を無意識だろうが浮かべるのだ。
 それを押さえつけて無理やり犯してやりたくなる。どうせ、そのうち抱く男の言いなりに、淫らな甘い蜜を躰からたらしてねだるのだ。

――――夜の客のまま、手放すのは惜しい。

 初老の男はいつの間にか、八戒を手に入れる算段を心に描きはじめていた。
 金でできた籠で美しい蝶々を飼うために必要なことはなんだろうかと考えを廻らせる。


 
 自分にとって八戒は、天が授けた最後の可愛い愛人だ。いや、そうでなくてはならん。
 
 初老の客は、早速自分の望みを実現すべく、外で待機している部下を呼ぶために電話の受話器を取り上げた。



 了