織姫三蔵×彦星八戒

 ここは天の川のほとり。
「フー。うぜぇ。やってられねぇ」
 織姫三蔵は、はたおりをさぼり川辺でマルボロを吸っておりました。周りは背の高いカヤの群生に囲まれていて一服するのにちょうどよかったのです。
 すると、
「三蔵! 三蔵どこですか」
 誰かが探しにやってきました。
「なんだ。うるせぇな」
 織姫は眉間に皺を寄せて顔を上げました。
「あはは。ここでしたか」
 見ると、ジープに乗った彦星八戒が爽やかな笑顔で手を振っていました。
「天の神様から、結婚のお許しが出たんです。お迎えに来ましたよ」
 八戒はいかにも王子様っぽい中華風の長い衣を着ておりました。黒髪に緑の目という端正な容姿にそれはよく似合いました。いそいそと彼は車から降りてきました。
「新婚旅行はどこにします? 南の島ですか? それともヨーロッパ? 」
 とってもうれしそうです。そんな彦星をじろりと横目で見ていた織姫でしたが、
「ったく。面倒くせぇ。んな遠くに行かないとヤれねぇのかてめぇは」
 タバコの煙を吐き出し、ぞんざいな口ぶりで言い捨てました。
「さ、三蔵」
 彦星はショックを受けたようでした。
「僕と……結婚したくないんですか」
 がっかりした口ぶりです。
「んなこた言ってねぇだろうが」
 彦星を織姫は無言で引き寄せました。うつむいた顔を上げさせて、唇を合わせます。
「んっ……」
 濃厚なくちづけに、さすがの彦星八戒も口が利けなくなりました。
「フン。相変わらず敏感だな」
「さ、三蔵」
 三蔵の指は八戒の胸元をつかんでくつろげました。
「ダメです三蔵……」
「なんだ」
「こんな外で……! 」
「うるせぇ」
 三蔵は草の上に八戒を押し倒しました。そのまま淫らな手つきで下肢をはだけさせ、八戒のをやんわりと手で握りました。
「三蔵ッ」
 敏感な裏筋に指を這わしてなぞりあげられ、八戒は思わず悲鳴を上げました。
 しかし、それは甘さを含んだ声でした。
「フン。ぬるぬるしてやがる」
 三蔵は囁きました。
「すっげぇガマン汁の量だぞ。てめぇ、最初から期待してただろ」
「そんなこと……」
「試してやる」
 三蔵は八戒の肉冠を輪にした指でしごき上げました。
「くぅッ」
 八戒は震えるしかありません。
「腰、動いてるぞ。てめぇ」
 三蔵は愉しそうに笑っています。喉の奥でくぐもった人の悪い笑い声を立てました。
「触ってもいねぇのに、乳首まで勃たせて淫乱が」
「あ……」
 下で屹立を扱きながら胸に舌を走らせ、震えるピンク色の小さな屹立を舐め上げました。途端に、びくんと八戒の躰が痙攣します。
「やめ……さんぞ」
 頭の中が真っ白になるような快楽の火花が散りました。腰奥から、胸から、相乗した悦楽が、内側でくすぶり甘い拷問のようです。
「ああッ……ああッ」
 びく、びくと八戒は腰を震わせました。よくてよくてしょうがありません。
「外でヤられんの、実は好きなのか」
 反応の良さに、三蔵が口元を緩めます。八戒は首を振りましたが、腰がひとりでに蠢いてしまいます。
 ちゅ、ちゅっと三蔵の口が胸の乳首を中心に肌を吸いました。淫らな鬱血の花がそこかしこに散ってゆきます。
「やぁッ……や」
 もう、甘く震えるしかなくなった八戒は圧し掛かってくる男をどけようと手をあげましが、躰はうまく動きません。
「抱いて欲しいってオネダリしてみろ」
 三蔵は口端をつりあげるようにして笑い、長い指についた八戒の透明な先走りをぺろりと赤い舌を伸ばして舐めました。
 指と指の間に、粘性のゆるい液体が糸のように絡み滴っています。淫らそのものでした。
 その間も、片方の手で八戒を苛めることは忘れません。乳首を捏ねるようにされて、八戒がたまらず叫びます。
「止めて下さい。お願いですから止めて……」
「嘘つきが。さっさと脚を開け」
「ああッ」
 胸へついばむようなキスをしていた三蔵は、傷のある腹部を通り過ぎ、もっともっと下へと舌を走らせました。
 屹立を指で扱くことを止めず、小さく口を開けた鈴口を舌で突付くようにしました。八戒が声にならない声を上げて悶絶します。
「ダメ……ダメです! そこは! 」
 根元は長い指で擦られ、敏感な先端を淫らな舌使いでもてあそばれています。八戒は躰を前に倒して折り、指に触れた草をつかんで首を横へ振りました。限界でした。
「イヤですイヤ……」
 しかし、躰は正直でした。とろとろと溢れる体液は、涙のごとく滴り、三蔵の手を汚します。鬼畜な笑みを浮かべ、三蔵は淫液を手ですくい、八戒の後ろへ塗り付けました。
「ぐ……! 」
 強烈な感覚でした。前を嬲られながら、同時に後孔を突つかれます。気が狂いそうな快美感が全身を走り抜けました。
「…………! あッ」
 後ろで密かに息づいている肉の環を、三蔵の指が潜り抜け、狭い肉筒をゆっくりと出し入れされました。
「はぁッ……はぁ……ダメ……本当にダメ」
 自分の勃ちあがった屹立をアメのようになめすする三蔵を止めようと、八戒が股間へ手を伸ばしました。金色の髪を手でひっぱろうとします。
 途端に、うるさいとばかりに鬼畜坊主の手が伸び、その手を押さえつけました。
「ああッ」
 両足を大きく開いた恥知らずな格好のまま、八戒は三蔵に貪られていました。ぴくんぴくんと腿が限界を知らせて震えます。
「ひぃッ」
 後ろの蕾を指で穿ったまま三蔵の舌が舐め回しました。八戒が紅潮した躰をひねって仰け反ります。
「ああッ」
 不意に、三蔵は指を抜きました。大きな音を立てて、脚の付け根にキスをします。
「俺が欲しいって言ってみろ」
「さんぞ……」
「言わないとヤらねぇ」
「さん……! 」
 ふう、と三蔵は後ろの孔に息を吹きかけました。ひくひくと蠢くそこは八戒の意思の通じぬ別の淫らな生き物のようです。
「んぅ! 」
 八戒は細かく痙攣しながら、躰を仰け反らせました。軽くイッてしまいました。しかし、肝心の性器は三蔵の指にがっちりと締め付けられ、達することはできません。
「後ろにブチこんで欲しいんだろうが。言え」
 紫の目が嗜虐的な色を帯びて光っています。
「さん……さん」
 がくがくと腰が震えました。もう限界です。
「欲しい……です」
 赤い舌がもつれながら、必死で音をつづります。
「聞こえねぇな」
 無慈悲な調子で三蔵が言いました。
「もっとでけぇ声で言え」
 八戒がもう無理だというように、首を振ります。三蔵は許さぬとばかりに、手のひら全体で八戒のペニスを包み上下に擦りました。ぬちゃぬちゃと卑猥な音が立ちます。
「あ、ああっ」
「これでも言えねぇのか。チッ」
 三蔵は舌打ちをしました。そして、まるで興味が失せたかのように立ち上がろうとしました。
「三蔵ッ待って下さい! 」
 八戒は必死で叫びました。せつなげに指で三蔵の長い袖をつかみます。このまま放置されたら、気が狂ってしまうと思ったのです。
「なら、きちんと聞こえるように言うんだな」
 三蔵が冷然とした調子で告げると、八戒は唾を飲み込みました。
「さんぞ……」
 ぬるりとした感触がペニスの先端に走りました。三蔵が駄目押しとばかりに、鈴口に舌先を差し込んだのです。
 淫靡な口淫に後孔が疼いて疼いてしょうがありません。八戒はついに肉欲の前に膝を折りました。
「抱いて下さい……さんぞ……さん……」
 尻を揺らして、三蔵にねだります。
「聞こえねぇっつたろが」
 三蔵は冷たい口調で認めません。八戒は何度も上唇を自分の舌で舐めると、精いっぱい大きな声を出しました。
「抱いて……抱いて下さい……さんぞッ……」
 そう言うと、脚の間で自分を覗き込んでいる相手を長い両足で挟んで引き寄せようとしました。
「早く……早く……突いて……いっぱい……ッ」
 甘い甘い吐息塗れの声が、こぼれ落ちました。それは切なげな悲鳴に似てました。
「いいだろう」
 生臭鬼畜坊主はすました顔で言うと、八戒の躰を抱えなおしました。服を寛げ、布の間から怒張をさらすとそれを八戒の狭間へぴたりとくっつけました。
「あ……」
 熱い怒張が押し当てられる硬い感触に気が狂いそうでした。ぴくんぴくんと脈打つのを、後ろの襞で感じてしまい、八戒が躰を突っ張らせて痙攣します。
「あ、ああッ」
 三蔵の太くて硬いモノがようやく後ろいっぱいに埋められました。
 最初はつるつるした先端が擦るように当てられ、そのうちカリ首がようやく環をくぐると、その張り出した部分が八戒の一番敏感な箇所をかすめたので、肉筒は軟体動物のように収縮しました。
「あーッああッああッあ……」
 がくがくと八戒が貫かれて小刻みに痙攣します。
「イッたのか」
 くっくっと三蔵は躰の上で笑っています。
「早ええな」
 突き入れられただけで、達してしまったのです。三蔵のペニスが粘膜を擦る淫らな感覚に、我慢できませんでした。
 びくびくと四肢を震わせ、八戒は強烈な快楽のあまり、ほとんど目を剥いています。
「さん……」
 腰から下が蕩けたようで、もう自分の躰ではないかのようです。
「あっあっ」
 上から力強くリズミカルに穿たれると、甘い声が幾らでも出てしまいます。
「さんぞ……さんぞ」
「尻、動いてるぞ。いやらしいヤツだ」
 耳元で三蔵が囁きますが、もう気にもなりません。求められるがままに躰を開きました。
「あっああ」
「イイ……オマエが下で尻を動かすとすげぇ気持ちイイ」
 ひくひくとわななく八戒の粘膜は締め付けたかと思うと降参するかのように弛緩し、三蔵を頬張ったまま淫らに口をぱくぱくと震わせています。
「すげぇ締め付けだ。八戒」
「言わない……で……」
 生理的な涙が浮かんだ目で八戒はぼんやりと自分を抱く男を見上げました。
 心地よさそうに、眉根を寄せて、自分を味わう淫らなその表情をまともに見てしまい、きゅっと下も反応して締まりました。
「……! 喰いちぎる気かてめぇ」
 にやりと卑猥な笑みを整った顔に浮かべると、三蔵は八戒の胸元へくちづけ、その尖った乳首を再び舐めまわしました。舌でこね潰すように嬲ります。
「―――――! 」
 今度こそ、正気を失った八戒の極まった声があたりに響きました。
「ああ! ダメッ許してくださ……許し……さんぞッ」
 そんなことを言ったって、許すわけがありません。三蔵は執拗に乳首を舐め、ときおり吸いながら、片手で八戒のペニスを扱き、腰を回すようにして突きまわしました。
「―――――ッ! 」
 もう、今度という今度はダメでした。救いを求める喘ぎが何度も何度も八戒の唇をついて出ました。八戒はすっかり快楽の海に突き落とされて溺れていました。
「や……さんぞッさんぞッ」
 無意識に腰をむちゃくちゃに振りたてて、一番自分のイイトコロに当てようとあがきました。もう限界はすぐそこでした。
「少し、静かにしろ」
 三蔵がいきなり、無情なことを言いました。
「近くに舟が来てやがる」
 快楽で頭が白くかすんでぼうっとなっている八戒にも、舟をこぐ音が聞こえてきました。
「聞こえるぞ」
 三蔵が口元を笑みの形に歪めて囁きます。
「それとも、聞かせてやろうか」
 そう言うと、腰の動きを早くしました。
「や……待っ……」
 恥知らずな高い声を上げてしまいそうになって、八戒は口を両手で塞ぎました。
「ふ……ぅッ」
 吐き出す先を失った躰は、悦楽が淫らに内攻し、余計感じてしまいます。
 それなのに、そんな敏感な躰を三蔵は激しく責めたてました。肉が肉を打ち、粘膜が擦れ合う音が立ちました。
「あぐッ」
 声を上げてしまいそうになって、八戒は自分の指を噛みました。さんざん犯されている尻が三蔵のペニスを咥え込んだまま小刻みに震えています。
 幾らなんでも、こんな音を立てていれば、交接しているのが丸分かりに違いありません。本当に三蔵は男に抱かれている八戒のことをさらしものにする気なのかもしれません。
 舟の音がいっそう近づいたそのとき、三蔵が円を描くようにして腰を使って、肉筒を摺りまわしました。
「んんッんッ」
 両手を組んで、口を封じ、八戒は躰を痙攣させました。目の前が白く光り、何もかもが闇へと吸い込まれてゆきます。
「―――――――! 」
 三蔵がひときわ奥を穿った時、八戒は前を弾けさせました。カヤに周囲を覆われた草むらの中で、三蔵に抱かれたまま、近くに人のいる舟がいるというのに、達してしまったのです。
 喘ぐことができない分、快楽は躰の裡に留まり、八戒を責め苛みました。しとしとと、白濁液がその屹立を伝い、根元へ滴り落ちてゆきます。腹部にある傷も精液で濡れました。
「俺をおいてイキやがって」
 三蔵が口を歪めて笑いました。そのまま、力の抜けた躰を思い切り突きまわします。
「ひぃッ」
「大声立てるんじゃねぇ。まだ、その辺にいるかもしれねぇだろが」
 三蔵は紫色の瞳で流し見るように周囲を見渡しました。舟のこぐ音はだいぶ小さくなっていました。何度も何度も感じるところを貫かれて、八戒は続けざまに達してしまいます。
「見られると思って興奮してんのか。このスケベが」
 三蔵が嗜虐的な声で罵りました。突き入れている三蔵には、八戒の反応が直に分かってしまうのです。恥ずかしさに八戒は目元を染めて顔をそむけました。
 しかし、もう逆らう気も起きません。何をされても感じてしまい、イッてしまう状態になってしまっていたのです。
 八戒は身も世もなく喘ぐだけでした。骨まで蕩けてくずくずに崩れてしまいそうな強烈な快楽でした。
「ああッああッさんぞ……! 」
 三蔵を包み込んだ粘膜が激しくうねり、八戒はまた前を弾けさせました。その蠢きに誘われるようにして、三蔵も奥まで貫いたまま、腰を震わせて八戒の中に射精します。
 粘膜に熱い飛沫が広がり、八戒は淫靡な感覚に身を焼かれたまま、意識を失いました。


 それから。
 暇さえあれば、織姫と彦星は抱き合うようになってしまいました。躰の相性が良すぎたのでしょう。織姫三蔵はもう、織物をするのを止め、彦星八戒もジープに乗るのを止めてしまいました。





「困った神様達は、それじゃ逢うのは年に一度にしなさいとふたりに命令しました――――」
 悟浄は神妙な顔で、宿の部屋で悟空相手に七夕の由来を話していた。
「その年に一度、織姫と彦星が逢うのが七夕の日なの? 」
「おっ。カンがいいじゃん。サル。そーそ。あんまりセックスばっかしてるとよくねぇっつー神様の教えっつーか……」
 悟浄はにやにやと笑いながら、悟空に説明していたが、背後に殺気を感じて口を閉ざした。
「悟浄」
 果たして、後ろには黒髪碧眼のあの男がメガネを光らせて立っていた。
「一体、今まで悟空になんのお話をしていたのか、じっくり聞かせて頂きましょうか」
 あの男――――八戒は突然、河童の耳たぶをつまみ上げた。
「痛て! いててて! ちょ! ひっぱんな! 」
 悟浄は涙目になって、抵抗した。
「……だって俺、こないだ野宿した晩、オマエと生臭坊主が草むらでサカってんの、つい見ちゃって」
「…………」
 八戒の顔色はすっかり変わっている。
「悟浄」
 黒いオーラが背後からゆらゆらと立ちのぼる。
「……悟空に何を言ったのか。本当にじっくり聞かせてもらいますよ」
 凄みのある声でそう言うと、悟浄の耳を引っ張ったまま、廊下へ引きずっていった。
「痛て! いててて! あんな見えるトコでヤってるのが悪いんだろ! 」
 悟浄は喚いた。
 しかし、八戒は手を緩めない。全く聞く耳がないようだ。悟浄の悲鳴が闇夜にこだまする。

 七夕飾りが笑うように夜風で揺れた。




 おしまい。