年越そばと全身タイツ

「年越しそばができましたよ。悟空」
「うわっ。うまそー! 」
 西へ向かう途中のとある宿で、三蔵一行はのんきな年末を過ごしていた。
「悟浄と三蔵の分も、もっていってもらえますか? 」
「うんうん! もってくもってく」
 うきうきとした口ぶりで悟空は八戒の周囲を跳ね回った。宿の台所を借りて年越しそばやら、簡単なおせちやらを準備した八戒は、自分の首尾に満足がいったように目を細めた。
「熱いから気をつけてくださいね」
 蕎麦の入った器をお盆に載せ、宿のやや急な階段を八戒は悟空とふたりで上った。借りている部屋は二階だった。
 安普請な宿の廊下がぎしぎしと鳴る。勢いよく部屋のドアを開けた。
「三蔵、悟浄。お待たせしましたお蕎麦で……」
 しかし。
「ん? なんら? 」
「あ? 」
 赤い顔をした最高僧とエロ河童が顔を上げた。
 部屋に転がるのは無数の酒瓶、越の寒梅やら八海山やら銘柄の様々な酒の空き瓶が所狭しと転がっていた。 ごろごろと木の床の上を所在なく倒れている。
「な……」
 八戒は絶句した。八戒が年越しの準備をしている間、このふたりときたら、すっかり出来上がってしまっていたらしい。
「うっわー! すっげぇ酒臭いー! 」
 悟空も背後でその惨憺たる光景を垣間見て叫ぶ。
「なんだ? 俺は酔ってなんかねぇぞ」
「そうそう」
 悟浄と三蔵はなおもそういいながら手にした猪口を口へと運んでいる。酔っ払いが「呑んでない」とか 「酔ってない」とかいうときは相当できあがっているときだが、今の悟浄と三蔵がまさにそうだった。
「何本飲んだんですか! あーあ! もうッ僕がせっかくお蕎麦を作ったのに! 」
 八戒はがっかりしたというように肩を落とした。それを傍にいた悟空が慰める。
「だいじょぶ! 八戒ってば。俺、悟浄と三蔵の分も食うし! 」
 その声を聞きとがめた最高僧は憮然とした表情で眉を吊り上げて言った。
「何勝手なこと言ってやがる。ソバぐらい食えるぞ」
「そーそ。らいじょうぶだってさ。はっかいー」
 傍らでへべれけになってる悟浄も軽い調子で同調した。
「いいえ。僕がせっかく丁寧にダシをとって作った傑作のお蕎麦なのに、酔っ払いに食べてなんか欲しくありませんよ」
 八戒は部屋の中央にある机の上に蕎麦の載ったお盆を置くといやみったらしく呟いた。
「なんらって? 」
「酔ってて味なんか分からないでしょう。貴方たちはもう」
「いーからいーから」
 しばらく埒のあかない言い争いをしていたが、悟浄が白い液体の入った小瓶を片手に立ち上がった。
「も、いーから、はっかいも飲めよ」
 それは不意打ちだった。
「! 」
 酔っ払いの悪戯半分という行為だった。悟浄は悪童のような表情を浮かべながら、八戒の口へとビンを押し付けて強引に飲ませ、更にそれを吐き出せないように唇を手で封じた。
「ぐ……ッ」
 八戒が目を白黒させる。
「わはは。オマエも巻き添えー♪ 」
 悟浄といえば無理やり飲ませたというのに、上機嫌でげらげらと楽しげに笑っている。ちょっとした悪戯のつもりなのだろう。
「……もう! 貴方達が羽目を外すのは勝手ですけど、僕まで巻き込むのは……」
 無理やり酒を飲まされて、怒りに顔を歪めた八戒だったが、そのとき妙なことが起こった。
「ひっく……」
 小言を最後まで続けられずに妙なしゃっくりをし始めたのだ。
「は、八戒? 」
 悟空が不安そうに目を見開く。
「ぼ、僕まで酔わせ……ひっく……どうす……ひっく……つもりで……ひっく」
 八戒の様子がたちまち一変した。
「う、うわ? 」
 それを見て悟空が慌てる。
「は、ははは」
「ふはははは」
 傍らにいる金髪生臭坊主とエロ河童には反省というものがない。けたけたとしつこく笑い転げている。
「酔ってる酔ってる」
「くっくっくっ」
 いつもと反応の違う八戒の様子がよほどおかしいのか、指を差して嬉しそうに腹を抱えている。
「は、八戒、本当に酔っ払っちゃったの? ど、どーして? いつもは八戒って何飲んでも酔わないじゃん! 」
 軽くパニックに陥ってる悟空の足元に、八戒は崩れるようにずるずると座り込んだ。
「うふふふ」
 いつもと違い、正体をなくして顔を朱に染め、熱い息なんか吐いている。目つきもとろんとしてきていた。
「ええ?! なんでー? 本当に酔っちゃったの? もう悟浄ッてば何を飲ましたんだよ! 」
 悟空の怒鳴り声に、悟浄が持っていたビンをかざした。
「これ」
「え? ……でもこれって」
 悟浄が取り出してみせたのは。なんと。
 甘酒のビンだった。
 甘酒なんてものは、普通アルコール分なんかほとんど含まれていない。
 普通は酔っ払うはずはなかった。
「ど、どーして? どーして八戒ッ甘酒なんかで酔っちゃうんだよ。ちょっと待ってよ! 」
 悟空が足元に倒れこんだままの八戒を助け起こそうとして悪戦苦闘する。
「うひゃひゃひゃひゃ」
「くっくっくっくっ」
 もうさっぱり収拾がつかなくなった。何が楽しいのやら、いいザマだとばかりに悟浄と三蔵は天を仰いで大笑いしている。
「八戒ッ! 八戒しっかりしてよ! 八戒ってば! アレ甘酒なんだよ! はっか……」
 そんな悟空の声にがばっと八戒が顔を上げだ。
「……僕ちょっと着替えてきます」
 すっかり目が据わっている。
「は、八戒? 」
 悟空が止める間もあらばこそ。
 八戒は部屋から飛び出して行った。



「は、八戒……」
 悟空はわけのわからない状況下におかれて呆気にとられていた。もう、蕎麦どころの騒ぎではない。
「くっくっくっ」
「ひーひっひっひ」
 そんな悟空と八戒の様子がよほどおかしいのか、三蔵と悟浄は相変わらず膝を叩いて笑い転げている。
「もうッ! 何笑ってんだよ! ふたりして。そんな酔っ払っちゃって……」
 悟空が我慢できずに叫んだときだった。部屋のドアが再び勢いよく開いた。
「ふ、ふふうふふうふふ」
 妙な声とともに、そこには八戒がいた。
「は、八戒! 」
「お」
「うお」
 悟空はもとより、酔っ払いふたりまでもが、その様子に目を剥いた。
 全身タイツ姿だった。お笑い芸人もびっくりだ。
 戻ってきた八戒の姿はすごかった。酔った挙句の行動だとしてもどうしてそんなものに着替えようとしたのだか理解に苦しむひどい姿だった。
「な、何そのカッコ! 」
 たまらず悟空が叫ぶ。
「いや、これ手に入れるのに苦労したんですよ」
 妙に冴え冴えとした声で、八戒が着ている伸縮自在な布地をひっぱって説明をした。
「ぶわははは! 」
「ひーひっひっひ! 」
 見ていた鬼畜ふたりといえば、酔いがさめんばかりの勢いで爆笑している。
「タイツか! 」
「全身タイツかよ! 」
「吉本だ吉本! 」
「お笑い芸人だな」
「結構似合うじゃん八戒さんってば」
 そう。それは何故かキワモノお笑いタレントが着るような黒い全身タイツだった。そんなモノを着込んで八戒は戻ってきたのだった。
 その頭までもがすっぽりとストッキングのような素材で覆われている。出ているのは顔だけだった。
 身体の線があらわに浮き出るのも構わず、全身タイツに身をくるみ、八戒はわけのわからないポーズを決めている。
「じゃーん」
 本人といえば得意げだ。おそらくお気に入りのマイコレクションのひとつなのだろう。ご満悦といった表情で得意げだった。
「でも、なんかコレってば、えっちじゃねぇ? 」
 悟浄が鼻の下を伸ばして、つるりとその腰のあたりをひと撫でした。全身を薄く伸縮性のあるタイツ地だけで躰を包んでいた。
 当然、躰の線が剥き出しになったその格好は恥ずかしくもいやらしかった。周囲の男達から見れば、ほとんど全裸と変わらない。
「確かにな」
 いつの間にか、目の据わった最高僧までもが傍らに酒ビンを手に寄ってきた。赤くした顔で八戒の躰を舐めるように見ている。
「えっちとか何ごとですか。……ひっく……困った人たちですねぇ。……ひっく……貴方がたにはこの美が分からないんですか」
 八戒もやはり酔っ払いだったが不穏な何かを感じたのだろう、悟浄の手を素早く払いのけた。
 しかし、さすがはエロ河童だ。悟浄はこんなことくらいではめげなかった。
「だってよ。こんなとこまでくっきり出ちまってるぞ」
「まったくだ」
 三蔵と一緒に勝手なことを言いながらにじり寄った。
「こんなトコくっきりはっきり出しといて、てめぇ露出狂のケでもあるんじゃねぇのか」
 鬼畜坊主が、無遠慮に八戒の股間の「大事な」部分の布を引っ張ったときだった。
 びりッ。
「! 」
「お」
「うほ」
 なんと。
 タイツが裂けた。
「ああっ! 」
 八戒が愕然とした顔をする。
「貴重なコレクションだったのに……! 」
 八戒のお気に入りの衣装は、無残にも『ピー』の部分が裂けた。
「うわああああッ八戒ッ」
 成す術もなく見ていた悟空も、この緊急事態に顔を青ざめつつも赤くしている。
 破られて、八戒の『ピー』は剥き出しになってしまった。びりびりになったタイツの切れ目から、大切 なモノが顔を覗かせている。
 酔いに白い躰を染めて、とろりとした目をしている肝心のご本人はまだ自分がどんなに間抜けで扇情的な姿をしているのか分かっていないらしい。
「ああ……どうしよう。コレ気に入っていたんですよ! 」
 自分のカッコよりも全身タイツの衣装が裂けたことの方がショックらしい。そんな八戒に構わず悟浄が手を伸ばした。
「すっげぇ、八戒ってば……やらしい……」
「! 触らないで下さいッ悟浄ッ」
 いつの間にか悟浄の手は、いやらしい蠢きで八戒の全身を這っていた。背後から羽交い絞めに抱きしめる。
「……タイツの上からでも、カンジる? 八戒ってば……」
 きゅ、と胸元で尖ってる屹立をタイツの上から摘み上げた。
「! 」
 酔って染まった目元をいっそう赤くして八戒は仰け反った。
「……結構、イイみたいじゃねぇか」
 三蔵がもう片方の胸へ唇を寄せ、タイツの生地の上から舌を這わせた。黒い布地が唾で光る。じっとりとシミになっていった。
「……さん……! 」
 いつの間にか、事態はとんでもないことになりつつあった。
「……今、反応したぞ。コイツ」
 剥き出しになっている狭間で、自己主張をし始めた八戒のソレを、三蔵は片手で確かめるように弄びはじめた。
 全身タイツ姿の中で無残に破かれているその箇所は淫猥だった。三蔵と悟浄がタイツ越しに愛撫する度にひくひくと揺れる。
「……八戒のスケベ」
「はぁッ……やめ……! 」
「何が止めろだ淫乱。おい、河童。そっちも破け」
「ああッ」
 胸元を悟浄に破かれた。タイツが引き裂かれ、いたずらされて、ぷっくりと立ち上がった小さな屹立が外気にさらされて震える。
「いやで……いやですッ……あッ」
黒いタイツから覗いた白い淫靡な肌、ピンク色の尖りに悟浄がむしゃぶりつくように舌を這わし出した。
「ああッ……ああッ……あぅッ」
 高い恥ずかしい声が部屋に響く。
「……酔ってるせいか、今日は素直だな」
 じっとりと八戒の股間を握り込み、その反応を確かめるように扱きあげている最高僧が淫靡な調子で囁いた。
「ひッ……」
 追い詰められた八戒は男ふたりに抱えられるようにしてテーブルへと引きずっていかれた。そこにはやや冷めた年越し蕎麦が四つ並び、ほんの先ほどまでの和やかで平和だった団欒の名残を見せている。
 なんの感慨も湧かないらしい悟浄と三蔵は、八戒の上体をテーブルへうつ伏せに押さえつけると尻を突き出させるような格好にさせた。
「年越しでヤッてやるって八戒サン♪ 」
「どうして……どうしてこんな」
「どうしてって、こんなカッコしてきたてめぇが悪いんだろうが」
 鬼畜ふたりは八戒の尻を覆っているタイツを勢いよく引き裂いた。いやな音を立てて化繊がずたずたになる。しなやかな脚、扇情的で肉の薄い小さな尻が黒いタイツ地の間から顔を出し剥き出しになった。
 八戒の艶めかしい肌が名残おしいとでもいうかのように、中途半端に脚にまとわりついているタイツがまた倒錯的でいやらしい。
「こんな風にすると、いかにも『犯してます』ってカンジするよな」
 エロ河童が口元を歪めていやらしく笑った。完璧に酔っている。
「そうだな。全身タイツなんかより、こっちのが似合うな」
「お、三蔵サマもそう思うー? 」
 いままでのお笑い芸人とでもいった様子が、まな板ショーか何かにでも引き出された生贄とでもいうべき凄艶な姿に、いつの間に変えられてしまっていた。
「……許しませんよ。三蔵ッ……悟浄ッ」
 憎まれ口をきいていた八戒だったが、それもそこまでだった。
「あうッ」
 背後から、悟浄が腰を押し付けるようにして侵入してきた。生々しい声を上げて背を反らし、喘ぐしかなかった。
「すっげぇ……締まる」
「ああッ……あ! 」
 目尻に涙を浮かべて八戒は首を振った。
「……酔って抱かれる気分はどうだ。はじめてだろうが」
「ううッ」
 いつも酔うことなどない八戒にとって、その交合は新鮮だった。ふわふわとして自制が利かず、理性も何もかもがぐずぐずに蕩けてしまう。
「八戒のスキなとこ……いっぱい突いてやるぜ」
「ああッ」
 肉筒の前側、前立腺の走る場所に怒張が当たった。背筋を氷のように快感が走り、八戒はわなないた。
「うっううッ……あ! 」
 射精感が込み上げ、ペニスの根元まで熱いものが走ってくる。そんなソレに横から三蔵が手を伸ばし、ねっとりと扱き上げた。
「いや……あっ」
 悟浄に突きまくられながら、背や脇腹や……性器を三蔵にもてあそばれる。八戒は狂った。
 しなやかに反る背へ三蔵のくちづけが降りる。暫く布越しに感触を楽しんでいたようだったが、その内短気な手つきで焦れたように背を覆うタイツを引き裂いた。
「あ……! 」
 剥き出しになった背筋に三蔵の舌が這い下りる。
「ひ……い…ぅ……ッ」
 思わず、上げてしまう艶めかしい声を止めようと、八戒が自分の口へ手をやり覆う。そんな仕草までもが男の欲情をそそった。
 感じ過ぎて目元に涙を浮かべ、翡翠色の瞳が部屋の白熱灯の明かりを受けてきらきらと輝いた。
 悟浄に突き上げられて揺れる黒い前髪、がくがくと揺れる首、ひくんひくんとわななく肉が周囲の男達を煽り立てる。
「くッ……出る」
 じきに悟浄が切羽詰まった声を漏らして、腰を揺すった。
「イク……八戒」
「あ! ああッ……あぅっ」
 散々細かく腰を振って、悟浄が遂情する。八戒を穿っていたペニスの根元がひくひくと小刻みに震え、体液をたっぷりと中へ注いでいるのが分かった。
「はぁッ……ああっ」
 どうして、こんなことになってしまったのか。まるで分からないと上気した顔を上げて恨めしそうに悟浄を睨む黒髪碧眼の美人に、無慈悲な調子で三蔵が言った。
「次は俺だ」
「! ……もう止め……」
「ここで止めるなんて、ジョーダンでしょ」
「そうだ。まだ夜は長げぇぞ。安心しろ」
「……っあ! 」
 抵抗をする隙もあらばこそ。
 八戒は再び太くて硬い肉棒にずっぷりと貫かれた。
「ひッ……」
「河童と比べてどうだ」
「あぅッ……」
 腰を揺すり、円を描いてまわすようにして穿たれる。鬼畜な最高僧は低い声で囁き続けた。
「すげぇナカ……熱いぞ。興奮してるな。てめぇ。変態が」
「そ……なこと」
「違わねぇな。こういうのがスキなんだろうが」
「犯ってやるよ。八戒サンってば最高」
 ぐちゅ、ぐちゅ。ぐじゅぐちゅぐちょ。
 打ち付ける腰の動きに合わせて振ってしまう淫らな尻の蠢きを止められない。
「や……」
 そんな背徳的な行為に溺れる三人に一定の間隔で打ち鳴らされる殷々とした音が耳に届きだした。
 ゴーン……ゴーン。
 遠くで撞かれる鐘の音。煩悩を払う除夜の鐘だ。
「あ……」
「もう今年も終りか」
「姫納めと姫始め、同時だな」
「ま、いいんじゃね」
 勝手なことを生臭坊主とエロ河童は言い合っている。
「は……勝手なこと……! 」
 八戒の抗議も耳に入らないらしい。鬼畜ふたりに反省はない。
「お正月には……八戒突いて♪ 」
「八戒……マワして遊びましょ♪ 」
「はーやくこいこい……お正月♪ ってね」
 行為に溺れる荒い息の狭間で、碌でもない替え歌まで呟いている。
「……!! 」
 もう、このふたり、本当に許しません。酔いと行為の快感で脳が白く霞んではいたが、八戒は密かに固く固く胸に誓った。
 三蔵が欲望を吐き出す頃、八戒は悟空に気がついた。あまりのことに悟空は顔を真っ赤にしてどうすることもできずに、今まで立ち尽くしていたのだ。
 眼前で行われている行為は悟空の理解力を超えていた。悟空は魂が抜けたような顔をしていた。傍らに置かれている蕎麦に手を伸ばすことすら忘れている。
「ごくう……ごく」
 三蔵に交代して、悟浄に今度はテーブルの上で仰向けにされて貫かれる。そんな苦しい息の下で八戒は悟空に呼びかけた。
「助け……て」
 さらさらと艶やかな黒髪がその額の上で揺れた。濡れた唇が男を誘うように光る。全身を覆う布地は引き裂かれ、ところどころ淫らな肌を晒して男ふたりに蹂躙されている艶めかしい姿だった。
「! 」
 思わず悟空は前かがみになった。三人の淫靡な交情を見つめ続けていて、そこはいつの間にかパンパンに張り詰めてしまっていたのだ。青少年としてどうしようもない生理的な反応だった。
「お、サルも混ざりたい? 」
「フン。生意気にサカリやがって」
「そう言うなって。こーんな、えっちな八戒見てたらそりゃしょうがないよな」
 埒をあけて少しは落ち着いたらしい三蔵と悟浄が振り返って勝手なことを言った。
「いやで……す」
 男の白い体液を肉筒の奥の奥まで叩き込まれ続けて、八戒は思わず呟いた。もう躰を汚されるのは嫌だった。これ以上、陵辱者が増えるなんてとんでもなかった。
 でも。
「八戒ぃ」
 悟空は顔を真っ赤にして純情そうな口調で言った。
「どうしよう……コレ……ごめん。俺のも……こんなんなっちゃって……」
 八戒が悟浄に抱かれながら視線を落とすと、確かに悟空の前は痛いほどに張り詰めきっていた。まだ少年らしいピンク色の性器がふるふると揺れている。
 抱きたいとまだ幼さの残すオスの本能が全身で呻き声をあげているようだ。どうしようもなかった。生理的な反応だった。しかも、八戒はこんな悟空のおねだりにコトのほか弱かった。
「……しょうがないですねぇ」
 諦めたように八戒は言った。確かに今夜の八戒は普通じゃない。悟浄の躰の下で貫かれたまま、艶めかしい淫魔のような笑みを浮かべて悟空を差し招いた。
「いらっしゃい。悟空……今夜は特別ですよ」
「! 」
 妖しい口調に思わず、その耳元にちゃんとカフスが嵌まっているか確認してしまう。それほど蕩けたような人が変わったような口調だった。妖美だった。
 八戒はすっかり酔っていた。飲まされた甘酒と、この異常な状況に酔っ払っている。そうとしか思えない。
 確かに、今夜の八戒は酔っ払いだったのだ。
「開き直ったな。てめぇ」
 金の髪を揺らして最高僧が口を歪める。
「……なんです。勝手し放題しといて。言っておきますけど貴方達のことは許しませんよ」
「おま。あんなにヨがっておいてそりゃないんでない? 」
「ヨがってなんか……ッ……あ……あッ……ごじょッ……ソコ」
「お、ココ? 」
「あ……ソコ……イイッ……あ、あッ」
「は、はっかい俺は? 」
「サル。てめぇはソコで正座して待ってろ」



 そんなこんなで。



 騒々しくも淫らに四人の年越しは過ぎていった。









 おしまい。